古布の行方
裁縫師エナの店には、医務室のために集められた布が山積みになっていた。上等な麻布ばかりではない。子供の服、薄くなった寝具、穴の空いた袖。エナは鋏を置き、使えるところだけを丁寧に切り出した。
常連の女が、亡くなった母の前掛けを持ってきた。何度も洗って色が褪せている。女はこれを包帯にしてほしいと言いながら、目をそらした。エナは布を広げ、丈夫な縁の部分だけを長い帯へ仕立てると約束した。残った刺繍は小さな袋にして返すことにした。
見習いたちは針の数を争っていたが、エナは競わせるのをやめた。早く縫った布ほど糸端が緩み、傷に触れればほどけてしまう。まず縫い目が肌へ当たらないよう、裏返して見せた。
昼過ぎ、鍛冶師ゼマの弟子ニコが鉄の留め具を届けた。古い鎧の金属を直したものだと知り、エナは縁起が悪いと笑った。ニコは、いま誰かの傷を覆う箱に使われるなら良いことだと言い返した。
夕方、医務室から使いが来た。包帯の数は足りたが、冬の毛布はまだ不足している。エナは手伝いの者へ、町の家を回る前に倉庫の傷んだ毛布を調べようと言った。新しい寄付を求める前に、繕えば使えるものがある。
前掛けの刺繍は、花の茎だけが少し曲がっていた。エナが針で形を直そうとすると、女はそのままにしてほしいと頼んだ。母親が目を悪くしてから縫ったもので、曲がり方まで覚えていた。エナは刺繍の周りへ補強の糸を通し、形を変えずに袋へ仕立てた。見習いは上手に直すことと、直さず守ることが違う場合を初めて知った。
刺繍の袋を受け取った女は、母の前掛けから作った帯が遠い砦へ運ばれると聞いた。誰に巻かれるか分からない。それでも女は、残った刺繍を胸元に入れて帰った。




