↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は何度でも蘇る。魔王は玉座の間から出られない。  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/228

鉄の配分

鍛冶師ゼマの工房へは、東砦から矢尻の注文が来ていた。同じ日に水車番ラウネから歯車の修理も頼まれ、学校からは窓の蝶番が届いた。弟子ニコは戦の備えを先にすべきだと言ったが、ゼマは紙を広げて重さを測った。

矢尻を必要数作れば、今月の良い鉄は残らない。水車の歯車を直さなければ粉が挽けず、学校の窓が閉まらなければ寒い日に子供が手をかじかませる。誰か一人に全量を渡せば済むほど、鉄は余っていなかった。

ゼマは城の執政官メルドへ使いを出し、古い鎧を溶かす許可を得た。錆びた胸当てから採れる鉄は質がまちまちだったが、蝶番や留め具なら十分だった。矢尻には良い鉄を回し、水車には継ぎの金具を作った。

ニコは鎧の裏側に刻まれた古い名前を見つけた。何十年も前の衛兵のものらしい。ゼマは名のある板だけ溶かさず脇へ寄せた。戦に使った鉄をもう一度戦に使うとしても、その持ち主の名まで消す必要はない。

日が落ちるころ、学校の使いが蝶番を受け取りに来た。ニコはまだ熱い金具を渡そうとして、ゼマに手を叩かれた。冷まして油を差してから渡す。急ぎの注文ほど基本を省くなと教えられた。

古い鎧を運んだ兵は、これまで倉庫を守ってきた品を壊すのは忍びないと言った。ゼマは鎧の留め金を手に取らせ、今のままでは肩に合わず、兵の体を傷つけると説明した。形が変わっても鉄は残る。兵は小さく頷き、溶かさず残した名板を預かった。後日、その名を刻んだ小さな札が、兵舎の壁へ掛けられることになった。

翌朝、工房には水車から粉の匂いが漂った。村で挽いた小麦がパンになり、砦の兵もそれを食べる。鉄をどこへ配るかという相談は、武器を何本作るかという話だけでは終わらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。