薬草の棚
城の医務室で助手リグが割ってしまったのは、高価な治療瓶ではなく、蓋を替えたばかりの水差しだった。床へ広がった水を拭く間に、医官セフィは乾燥薬草の棚から一本の小瓶を取り出した。西の村へ送る予定だった薬が、間違った箱へ入っている。
「札を読んで入れました」
「読み間違いか、札の付け違いか、どちらも調べましょう」
セフィは叱責より先に、誰がどこで瓶を渡したかを尋ねた。箱詰めしたのは別の見習いで、急ぐあまり同じ色の紐を二種類の瓶へ巻いていた。誤りは一人だけが作ったものではない。
薬棚の下段を空け、用途別に紐の結び方を変えた。指先で分かれば、停電した廊下でも取り違えない。目の弱い患者へ渡す際にも便利だと、リグが気づいて新しい札を作った。
一方、城下では咳をする子供が増えていた。季節の冷え込みのせいか、旅人が持ち込んだ熱なのかは確かめられていない。セフィは東の砦へ送る包帯を減らさずに済むよう、診療所に古布を集める箱を置いた。よく洗った布だけを受け取り、汚れたものは別にして煮沸した。
見習いの一人は紐の種類を覚えられないと告白した。セフィは彼に、色ではなく手触りを使う案を試させた。結び目を大きくする薬と、二度巻きにする薬を分けると、目を閉じても区別がついた。間違いを隠さずに口にした見習いが、棚の決まりを一つ改善したのである。リグは次の日、古い瓶にも同じ結び目を付け直した。
夕方、リグは割った水差しの取っ手を拾ってきた。欠けた陶器は水を入れられないが、薬棚の扉を引く道具に使えるかもしれない。セフィはその案に笑って、まず鋭い端を削るよう命じた。医務室では、壊れたものを直す仕事と、生きている者を支える仕事が隣り合っていた。




