白石の道
斥候ネインが再び砦へ来たとき、ベドは道端へ置いた小さな白石のことを話した。兵が逃げた経路を確かめるための印だったが、拾って並べれば危ない段差を示す道標にもなる。ネインは石を手に取り、一つひっくり返した。裏側には細い苔がついている。
「これなら夜にも見つけられるな」
「人間にも見つかります」
ベドが答えると、ネインは頷いた。道を秘密にできるのは、道を知る者が少ないうちだけだ。村人が使うなら隠し通すことより、誰にも危険な場所だと分かる印の方がよい。
二人はロアを連れて、古い水路まで歩いた。途中、倒れた樫の枝が幅を塞いでおり、担架を通すには切る必要があった。ネインは斧を入れる場所を考えたが、木の幹には小鳥の巣がある。巣を避けて枝だけ切ると、道幅はようやく大人二人分になった。
道の終わりには魔族の足を止める見えない境界がある。ネインがそっと靴を前へ滑らせると、いつもの場所で止まった。ロアは初めてその様子を近くで見た。脚が凍ったように動かないのに、ネインは痛みを訴えない。
「ここから先を使う人間もいる」
白石を並べる作業には、村の木こりも加わった。彼は昼に木材を運ぶため、兵が知らないぬかるみをよく覚えている。ネインは地図の道が曲がりすぎていると感じていたが、木こりはその先の土が雨で崩れると教えた。短い道がよい道とは限らない。ロアは歩いて確かめた場所だけへ細い線を引き、聞いただけの場所には点を打った。
白石は境界の内側へ並べた。戻る者には帰路となり、先へ行く者にはこれ以上兵の助けが来ない印となる。彼らはそこで立ち止まったまま、向こう側の風に草が伏せるのを見届けた。




