牛を返す日
林で剣の男に助けられた少年は、牛を持ち主へ返しに行った。助けてもらった相手が何者かは、母親からも砦の兵からも聞かされている。それでも牛の腹にはいつもどおり草が入り、縄はいつもどおり擦り切れていた。少年にとって、その二つは別々の事実だった。
持ち主の女は牛の角の傷を見て、誰かが殴ったのかと尋ねた。少年が石にぶつけたと答えると、女は薬草の汁を塗り、少年にも膝の包帯を換えろと言った。少年は言いそびれていた礼の言葉を小さく口にした。
帰り道で兵ベドと会った。ベドは昨日の道をもう歩くなと命じず、林のどこまで一人で行けるのかを尋ねた。少年が古い榛の木を指すと、ベドはそこが村の大人の見える最後の場所だと教えた。境界を知らない子供を責めるより、先に見つける目印が必要だった。
砦ではロアが、剣の男に救われたという証言をどう記録するか迷っていた。敵に親切な行為があったと記せば、警戒が緩むのではないか。レシュは紙を奪わず、「縄を拾い、少年に渡した」と書かせた。動作を正しく残せば、読み手が考える余地は残る。
牛の持ち主は少年へ、去年生まれた子牛がその牛の後を追っていた話をした。母牛を探して柵を壊し、近所の菜園を荒らしたらしい。少年は謝り、柵を直す作業を引き受けた。釘を打つ手は包帯のため不器用だったが、木の板を支えることはできる。女は終わったら牛乳ではなく温かな豆茶を飲ませると笑い、少年はようやく肩の力を抜いた。
その晩、少年は家の戸口に古い牛の鈴を吊った。音がすれば、迷子が出たときすぐ分かると考えたからだ。母親は鈴を見て何も言わず、少年の包帯の結び目だけを直した。林にはまだ誰かが歩いている。しかし夕食の鍋には、今日収穫した豆が入っていた。




