弓弦を替える夜
東の砦の弓兵たちは、雨が止んだ夜に弦を張り替えた。湿った弦は伸びやすく、矢の飛び方が変わる。隊長レシュは一本ずつ手で確かめ、古い弦を火のそばへ並べた。
兵ロアは自分の弓を持っていない。槍を使う兵だが、手伝いはできた。弦の端を押さえ、結び目が緩まないよう見守った。
「今度また見つけたら、どうしますか」
ロアが年長のベドに尋ねた。ベドはしばらく考えてから、距離を取って知らせると言った。戦うかどうかは、相手が何をするかを見て決める。
「逃げるばかりでは守れません」
「見たものを生きて伝えれば、守れることもある」
ベドは弦を試しに弾いた。低い音がした。力を込めれば音は高くなるが、弓の材が耐えられる強さには限りがある。
夜更け、ロアは門の外に置かれた避難用の荷を運んだ。小麦袋、乾いた布、医薬品。戦いになれば最初に必要なものばかりだ。
弓兵の一人が、これではまるで負ける準備だと言った。レシュは聞き流さなかった。
「生き残る準備だ。門を守るのは、守るべき者がいるからだ」
弓兵の一人は、古い弦を捨てずに細い紐へほどいた。荷袋の口を縛るにはまだ使える。レシュは作業を見ながら、武器を整えるために別の道具を無駄にするなと教えた。兵糧を運ぶ人々も、砦の冬を支えている。ロアは古い弦を束ね、倉へしまった。明朝には村の木こりが薪を運ぶ予定だった。荷袋の紐が足りなくなるかもしれない。
ロアは短い縄を三つに分け、取りやすい場所へ掛けた。
ロアは荷を倉へ運び終え、最後に弓弦の余りを木箱へ入れた。小さな結び目が明日の働きを左右することを、ようやく理解し始めていた。




