渡された手紙
城下の学校に、東の砦から封書が届いた。差出人は兵ベドで、息子に宛てた最初の長い手紙だった。文字は大きく、途中で何度も書き直している。教師サラは息子の手元へそっと置いた。
息子はたどたどしく読み上げた。砦の薪が足りていること、今年の乾燥果実が甘かったこと、村で山羊が迷子になったこと。最後には、今度会うときは自分で読めるようになっていてほしいと書かれていた。
少年は笑い、すぐ返事を書こうとした。だが自分の名を最後まできれいに書けない。サラは急がなくてよいと伝え、一画ずつ一緒に練習した。
午後、執政官メルドが学校を訪れた。東の砦で避難路を整えていると説明し、子供たちの家族が不安を感じないようにしたかった。彼は息子の手紙を見ても、内容を聞かなかった。
サラは夫に、学校にはまだ何も変わらない日常があると話した。子供は靴を泥で汚し、文字を間違え、友達と喧嘩して仲直りする。恐れのためにその時間を奪いたくない。
夕方、少年は返事を書き終えた。『おとうさんへ。じぶんでよめたよ』。短い文だったが、文字は全部自分の手で書いていた。
少年は手紙を書いている途中、父の名前の最後の字を間違えた。サラが正しい形を教えたが、少年は紙を捨てず、隣へ書き直した。父ならきっと間違いを笑わないと思ったからだ。教室には、ほかにも家族へ手紙を書く子供がいた。川向こうの祖母へ、祭りで会った友達へ、収穫を手伝う叔父へ。サラはそれぞれの文字が紙に残るのを見守った。
手紙は次の便で東の砦へ送られることになった。サラは封を閉じるのを見届け、教室の戸を静かに閉めた。




