森から来た男
東の森の見張りが城門をくぐったのは、まだ露の乾かない時刻だった。斥候のネインは外套の襟に枝を引っかけたまま、衛兵の差し出した水を一息で飲んだ。休めと言われても首を振る。自分が見たものを、眠ってから話したくなかった。
護衛長ダルムは詰所の小部屋に彼を通した。机には小さな森の図面が広げられている。ネインは人間の四人組が通った道を指でなぞった。倒木の谷を横切り、赤目狼の群れが棲む岩棚へ向かい、半日後に同じ道から戻ったという。
「狼はどうした」
「六頭倒れていました。残りは穴へ逃げ込んでいました」
岩棚の狼は、森に生まれた魔族の猟師でも避ける。勇敢だからではなく、群れを追い払っても何の得にもならないからだ。
イセラは四人の服装を尋ねた。槍の女、弓を持つ少年、荷を背負った年長の男。そして剣を持つ先頭の男。右頬には、細い刃で引いたような傷があった。
「顔を見間違えた可能性は」
「近くまで来たのです。向こうは私を見て、道を尋ねました」
ネインは自分の角を示した。男は角を見ても剣を抜かなかった。沼を避ける道を教えると礼を言い、仲間を連れて歩いていった。
ダルムは報告を閉じた。戦いを避けた者が危険でないとは限らない。だが、道を尋ねた声まで脅威として書き換えてはならない。
部屋の外で、濡れた外套を乾かすために火が起こされた。ネインはようやく椅子にもたれた。報告の最後に一つ、言い忘れていたことがある。
「男の剣は、鞘だけ新しかった。柄には古い焼け跡がありました」
イセラは三度目の討伐記録に記された剣の特徴を思い出した。焼け跡は、あの夜、玉座の階段でついたものだった。




