灰色の手袋
医官セフィは、東の石窟から持ち帰られた灰色の手袋を調べていた。人間の手に合う大きさで、指先には薄い焦げ跡がある。内側には薬草の粉が残っていた。
手袋は炉の近くで見つかった。石を運ぶためのものか、傷を負った者の手を保護するためのものか、すぐには決められない。
助手のリグは焦げ跡を削って小瓶に入れた。セフィは薬草の粉だけを別に集め、診察記録に添えた。死者の持ち物を調べるときと同じ慎重さだった。
「勇者のものですか」
「そうかもしれない。でも決めつけるために調べているのではないの」
セフィは窓の外を見た。庭では杖を使う兵が、一人で歩く練習を続けている。以前より遠くへ歩けるようになったが、失った脚が戻ったわけではない。回復には限界と努力の両方がある。
夕刻、セフィは手袋の縫い目に細い青糸が混じるのを見つけた。城下で最近売られた染布と似た色だったが、同じ糸とは言い切れない。
彼女は市場の染物商へ尋ねることにした。商人がまだ城下にいれば、布の由来を知っているかもしれない。
染物商が残した布見本を調べると、灰色の手袋に混じる青糸より少しだけ濃いことが分かった。イセラは、それでも同じ産地の糸かもしれないと言った。セフィは色の違いも一致した部分も記録に残した。証拠が集まるほど、分からないことも増える。手袋は診察室の棚へ戻され、そこには日付と採取した場所を記した札がつけられた。
夜、診察室の灯を消す前に、セフィは三度目の検分簿を開いた。勇者の死に疑いはない。今ある疑いは、死んだ者がまた歩いているという事実の方だった。




