石の中の音
東の石窟へ入った水路職人ギズは、壁の奥から水滴の音が続いているのを聞いた。音は一定ではなく、時おり遠くで石を叩くような響きが混じる。崩れかけた地下道に風が通っているのかもしれない。
同行した斥候ネインは、入口に残る人間の足跡を示した。四人組は石窟の奥へ向かった後、同じ道を戻っていない。別の出口があるなら、地下水路を抜けた可能性がある。
ギズは壁の図面を広げた。昔の職人は保守のために、地上の石切場へ抜ける小道を作ったという。入口は今では土砂に埋もれ、どこにあるか分からない。
「掘り起こせば追えますか」
「追うためだけに掘れば、天井が落ちる」
ギズは慎重に足を進め、崩れた石を一本ずつどけた。奥には熱のない炉があり、壁の一部に真新しい煤がついている。誰かが最近、火を起こした跡だった。
ネインは弓を構えたが、人の気配はない。床には小さな穴があり、冷たい風が吹き上がっていた。人間なら通れる幅だが、ギズたちの領域はここで終わる。
ギズは石を投げず、穴の深さを糸で測った。自分が行けない場所に何があるか知りたい。それでも無闇に壊してしまえば、ここに流れる水まで失う。
ギズは石窟の出口で、持参した縄の長さをもう一度確かめた。地下に置き忘れた道具があれば、次に来たとき困る。兵は巻き尺を返すとき、傷んだ部分を示した。ギズは切り詰めて結び直し、道具箱の中へしまった。古い通路を直すには、まず自分たちの道具を失わないことが大事だった。手入れの行き届いた道具は危険な場所で人を助ける。
二人は入口へ戻り、崩れた天井に支柱を一本立てた。石窟の奥はまだ暗いままだった。




