石を温める者
城内の学匠モールは、失われた鉱石の性質を調べるため、古い炉を再び起こした。熱を蓄える石は、火に入れても燃えず、冷たい水へ落としてもすぐには冷えない。その性質は昔から知られていた。
弟子のソラは、鉱石が武器の力を増すのかと尋ねた。モールは小さな破片を槍の柄に巻きつけ、何度か振ってみせた。力は何も変わらない。ただ柄が少し温かくなっただけだ。
「便利なものが、いつでも強いものとは限らん」
学匠は石を火箸で取り出した。魔族が生まれ持つ術も似ているという。強い火を出せる者が、その後どれほど鍛えても炎を大きくできないことがある。だが火の使い方は覚えられる。
ソラは自分の掌へ小さな光を出した。幼い頃から同じ大きさだった。兄は光をもっと大きくできるが、暗い書庫で細かな文字を読むには、ソラの光の方が具合がよい。
午後、温室から水路の温度記録が届いた。前夜に修理した楔の効果が出て、わずかながら水が温まっている。失われた鉱石だけが原因ではなかった。
モールは石を棚に戻し、記録の欄へ原因不明と書いた。原因を一つに決めてしまうと、手入れするべき水路の亀裂を見落とす。
ソラは石の温度を測るため、朝から夕方まで水桶を替え続けた。結果は思ったほど揃わず、帳面には消した数字が何列も残った。モールは書き直しを命じなかった。失敗した数字も残せば、何を間違えたか後から分かる。ソラは炉の灰を掃き、測定した瓶に札をつけた。魔法の力が増えなくても、調べる手順を覚えることはできる。そこに学ぶ意味があった。
炉の火が落ちるころ、ソラは学匠へ新しい問いをした。石にできることと、できないことを調べ続ければ、人を傷つけるためではない使い道も見つかるのではないかと。




