つぶれた橋
北の宿場へ通じる橋は、雨のあとに中央が沈んだ。人間の羊毛商人オードは荷車を止め、板の隙間を覗いた。橋脚の一本が流木に押されて傾いている。馬を渡せば橋ごと落ちるだろう。
オードは砦から頼まれた調査のため宿場へ向かっていた。行き先には変わりがないが、道を変えるしかない。荷車を少し戻し、川の浅いところへ回った。
対岸で、老人が崩れた橋を見つめていた。昔は宿場に店を構えていたという。今は客が減り、町へ移った。宿場を通るのは狩人と旅人くらいになったらしい。
「四人組を見なかったか」
オードが尋ねると、老人は先週、剣を背負った男らが橋を渡ったと答えた。橋が崩れる前だった。彼らは橋の状態を気にし、木の杭を打っていたという。
「直してくれたのか」
「いや、危ないと知らせる印をつけていった」
オードは橋の近くに赤い紐が結ばれているのを見つけた。紐がなければ自分も無理に進んだかもしれない。
帰路、老人と一緒に杭を増やした。魔族から頼まれた調査はまだ終わっていないが、橋の危険を知らせる仕事なら今できる。
老人は橋を眺めながら、自分が店を畳んだ日のことを話した。最後まで残った客は、近くの丘へ薬草を採りに来る娘だった。娘は店がなくなると聞いて、椅子を一脚買っていった。その椅子はいまも使われているだろうか。オードは話を聞きながら、宿場の石畳に埋まった古い車輪の跡を見た。人が通らなくなっても、通った年月は消えていない。
翌朝、オードは宿場の古い井戸で四人組の足跡を見つけた。彼らが向かった方向を記し、砦へ書状を送った。書状には、橋の修理が必要だという言葉も添えた。




