↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は何度でも蘇る。魔王は玉座の間から出られない。  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/228

冬靴の寸法

城下の裁縫師エナは、兵の外套より冬靴の注文に追われていた。毛皮を裏へ縫いつけると暖かいが、足首が重くなる。夜番の衛兵には厚い革、畑仕事の者には柔らかい革が好まれた。

一人の兵が右足だけ大きな靴を頼んだ。昔、城門の落石で骨を傷めたためだ。エナは何度も寸法を取り直した。兵は恐縮していたが、歩くときに痛む靴では、どんなに丈夫でも役に立たない。

店にいた娘は、父がよく昔の戦いを語ると言った。エナは首を傾げた。戦を知らない子供に、知らなくてよい痛みまで渡したくはなかった。

「傷の話をするなら、治してくれた人の話も聞いておきな」

兵はうなずき、医官セフィの名を挙げた。落石の下から引き出された日、セフィは彼の手を握り、声が出るまで待ってくれたという。

夕方、東の砦から靴の追加注文が届いた。二人分の新兵の靴と、見張り台で履く防水靴だった。エナは寸法表へ書き足し、娘に革の枚数を数えさせた。

店の外では雪の気配を含む風が吹いた。急ぎの仕事が増えても、針目を粗くすることはできない。足元の一針がほつれれば、冷たい水がそこから入り込む。

エナは冬靴の注文を受けると、家ごとに足の形を記録していた。父親の靴を子供が譲り受けることもあるが、成長した足には合わないことが多い。革を無駄にしない工夫は必要でも、痛みを我慢させるのは違う。娘は小さな足型を木の板へ写し、名前を間違えないよう墨で書いた。いつか店を継ぐとき、この板が役に立つだろうとエナは思った。

エナは灯を近づけ、右足の大きな靴を仕上げた。受け取りに来た兵は足を入れ、床を二度踏んだ。痛まない、と笑った。その声を聞いてから、エナは次の革を裁った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。