冬靴の寸法
城下の裁縫師エナは、兵の外套より冬靴の注文に追われていた。毛皮を裏へ縫いつけると暖かいが、足首が重くなる。夜番の衛兵には厚い革、畑仕事の者には柔らかい革が好まれた。
一人の兵が右足だけ大きな靴を頼んだ。昔、城門の落石で骨を傷めたためだ。エナは何度も寸法を取り直した。兵は恐縮していたが、歩くときに痛む靴では、どんなに丈夫でも役に立たない。
店にいた娘は、父がよく昔の戦いを語ると言った。エナは首を傾げた。戦を知らない子供に、知らなくてよい痛みまで渡したくはなかった。
「傷の話をするなら、治してくれた人の話も聞いておきな」
兵はうなずき、医官セフィの名を挙げた。落石の下から引き出された日、セフィは彼の手を握り、声が出るまで待ってくれたという。
夕方、東の砦から靴の追加注文が届いた。二人分の新兵の靴と、見張り台で履く防水靴だった。エナは寸法表へ書き足し、娘に革の枚数を数えさせた。
店の外では雪の気配を含む風が吹いた。急ぎの仕事が増えても、針目を粗くすることはできない。足元の一針がほつれれば、冷たい水がそこから入り込む。
エナは冬靴の注文を受けると、家ごとに足の形を記録していた。父親の靴を子供が譲り受けることもあるが、成長した足には合わないことが多い。革を無駄にしない工夫は必要でも、痛みを我慢させるのは違う。娘は小さな足型を木の板へ写し、名前を間違えないよう墨で書いた。いつか店を継ぐとき、この板が役に立つだろうとエナは思った。
エナは灯を近づけ、右足の大きな靴を仕上げた。受け取りに来た兵は足を入れ、床を二度踏んだ。痛まない、と笑った。その声を聞いてから、エナは次の革を裁った。




