↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は何度でも蘇る。魔王は玉座の間から出られない。  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/228

ゆっくり冷える水

地下水路の修理を担う職人ギズは、冷たい水へ足を入れると眉をひそめた。昔は石切場へ通じる枝道にも湯気が上がったという。今は底に薄い氷が張り、壁の苔が白くなっている。

同行した兵は、勇者が熱を蓄える石を持ち去ったのではないかと尋ねた。ギズは道具箱を下ろして答えた。

「分からん。石がなくても水路は老いる。何でも一人のせいにすると、壊れた場所を見落とす」

水路の天井には小さな裂け目があり、そこから冷たい地下水が流れ込んでいた。裂け目は古く、長い年月をかけて広がったようだった。ギズは木の楔を打ち、漏れを一時的に止めた。

石切場へ続く分岐には、魔族が進めない境界がある。人間の職人なら越えられるが、ギズの足はいつものように止まった。境界の向こうにも修理が必要な壁が見える。手を伸ばせるほど近く、それでも届かない。

兵は槍を置き、楔を削るのを手伝った。職人は作業が終わるまで兵の階級を尋ねなかった。水路の中では、板を支える腕が一本多いことの方が大切だった。

夜には水の流れが少し戻った。城の温室へ届く水もわずかに温かくなったという。ギズはその報告を聞いて笑ったが、古い裂け目がすべて塞がったとは言わなかった。

ギズは兵に、古い水路の亀裂を定期的に測る方法を教えた。薄い木札へ印をつけて壁に固定すれば、次に来たとき裂け目が広がったか分かる。専門の道具がなくてもできる工夫だった。兵は槍を扱う手で木札を押さえ、ぎこちなく印を刻んだ。ギズは笑わずに待った。水路を使う者が水路を見守れれば、職人が来る前に危険を知らせられる。

水はゆっくり冷える。石も、壁も、暮らしも同じだと彼は考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。