失くした靴
東の砦へ戻った兵の一人は、山羊を探した日に靴を片方なくした村の若者だった。泥だらけの足を引きずる彼を見て、隊長レシュは予備の靴を渡した。軍の備品だが、返すのは乾いてからでよいと言った。
若者は礼を述べ、石切場で見た妙な跡を思い出した。石段の苔が剥がれ、誰かが重い物を引きずったような線が続いていた。山羊を追うのに必死で気に留めなかったが、翌日も残っていたという。
レシュは兵二人を向かわせた。石切場は砦の領域の端にあり、奥の崖へは行けない。昔から石材を切り出していた場所だが、境界の外側の石は誰も採れなかった。
現地では人間の靴跡が四種類見つかった。さらに大きな石の下に、古い鉄箱が半分埋まっていた。蓋は開き、中は空になっている。箱には城の古い封印があった。
「何を入れていたんでしょう」
兵が尋ねると、レシュは封印の形を紙へ写した。
「砦の記録には残っていない。城なら分かるかもしれん」
箱が空になった時期は分からない。錆の具合から見て、長く雨にさらされていたことだけは確かだった。
石切場の地面には、滑って転んだ新兵が落とした水筒も見つかった。レシュは水筒を拾い、誰のものか尋ねた。持ち主は恥ずかしそうに名乗ったが、叱られることはなかった。石切場は雨で足場が悪く、誰でも転ぶ。落とした道具を隠せば、次に使う者が困る。レシュは水筒を返し、石段へ砂をまく作業を頼んだ。調査の前に転倒する者を減らしたかった。
砦に戻ると、若者は借りた靴を洗っていた。レシュは靴を乾かす火のそばで、封印の写しを畳んだ。村の者が報告をためらわずに済むように、まず靴の礼を言うことにした。




