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勇者は何度でも蘇る。魔王は玉座の間から出られない。  作者: 竜太郎


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手の届く縁

東の境界近くで、荷馬車の車輪が溝にはまった。人間の御者は綱を引いたが、車輪は泥へ沈む。魔族の兵ロアは境界まで走り、向こうの車輪に触れようと手を伸ばした。


指先が届く前に腕が重くなり、体が動かなくなる。ロアは引き返して短い板を運び、境界を越える位置へ差し出した。御者が板を受け取り、車輪の下へ押し込む。救助は半刻かかった。


ベドは力任せに綱を引く代わり、石を支点にして梃子を作った。二人が同じ場所へ立てないなら、仕事を分ければよい。御者は泥だらけになりながら車輪を持ち上げた。


動き出した荷馬車には、東砦へ届ける乾燥薬草が積まれていた。ロアは遅れを詫びる御者へ首を振った。板の端には土が残り、境界を越えて受け渡された跡がはっきり残っていた。


車輪の泥を掻き出す間、御者は馬の手綱を握り続けた。馬が驚けば板が滑り、荷車がまた倒れる。ロアは馬へ触れることができないので、穏やかに声をかけるだけにした。ベドは板の角を布で巻き、車輪の木を傷めぬよう工夫した。

荷車が動くと、御者は礼として乾燥薬草を一袋置いて行こうとした。ロアは受け取らなかった。荷は東の患者へ届けるためのものであり、自分への謝礼ではないからだ。代わりに次の旅で板を一本持ってきてほしいと頼んだ。壊れた救助道具を補えば、誰かの役に立つ。


御者が去ったあと、ロアは使った板の泥を落とし、次に必要な者が見つけられるよう倉へ立てかけた。板の角は少し欠けていたが、まだ使える。ベドは輪の形を紙へ描き、どの角度で差し込めば持ち上がるかを記した。境界があるために生まれた手順でも、車輪に困る人間なら誰でも役立てられる。

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