水門の影
水路職人ギズは古い水門の下から、別の小さな水路が枝分かれしていることを知った。板で塞がれた横穴には泥が詰まり、いつの時代に造られたのか不明だった。
助手がすぐ開ければ西の畑へ水を送れるかもしれないと言った。ギズは首を振り、流れの先を見ずに開ければ下流の家が浸かると教えた。境界の向こうまで続くなら、自分たちの足では確認できない。
人間の測量師へ文を送り、横穴の出口を調べてもらうことになった。報酬に使う銅貨をメルドが認め、道具を村で借りる費用も計上された。作業は一日では終わらない。
ギズは水門を元どおり閉じ、泥の上に小さな杭を刺した。知らない道を塞いだままにすることも、今は村を守る選択だった。
ギズは横穴の前へ木板を置き、子供が覗き込まないよう縄を張った。古い水路の奥には冷たい空気が漂い、石の継ぎ目から細い水が落ちている。助手は音の響きから奥が広いと考えたが、ギズは確認していない広さを書かせなかった。
村の古老は幼い頃、横穴から湿った風が吹いていたと話した。今と同じ水路かどうか本人にも分からない。ギズは記憶を無視せず記録し、測量師へ渡す参考にした。数日後、測量道具を運ぶ人間の隊が到着する予定となった。水門の鍵はそれまで村長に預けられた。
測量師の宿は村の石倉になった。家のない者を泊めるための寝具を一部借りるので、ギズは村長へ理由を説明し、数を減らしすぎないと約束した。横穴の奥を調べる者には必ず綱を持たせ、帰りの合図を決める。水路の出口は見つかっていない。調査を始める前に決めるべきことが思いのほか多かった。




