板の裏の刻印
北橋でフィンは古い板を剥がし、裏側に小さな刻印を見つけた。古い職人の名と工事年が彫られている。今の橋はその上へ何度も板を重ねて直されてきたらしい。
大工頭ブラムは刻印を見て、前の修理が粗かったと決めつけなかった。雨や凍りつく川に耐えた板は、それだけ働いた。ホルは魔族側から、傷んだ場所の測り方をフィンへ伝えた。
新しい板を置く前に、フィンは刻印を紙へ写した。いつか今の工事の板も外されるだろう。そのとき職人が何を考えて直したか分かるよう、材質と釘の位置も書き残した。
橋の下では川魚が跳ねた。ブラムは手を止めずに音を聞き、作業を少し早く終えた。夕方には向こう岸で収穫した野菜を運ぶ荷が待っている。
古い板の端には、鉄釘ではなく木栓が打たれていた。以前の職人が鉄を節約したのか、川の湿りで錆びるのを避けたのかは分からない。ブラムは方法だけを批判せず、どの箇所で長持ちしたか確かめた。
フィンは新しい板の裏にも自分の名前を小さく刻もうとして手を止めた。修理が失敗したとき、名を残すのが怖くなったからだ。ホルは対岸から、失敗した場所が分かる方が次の者の役に立つと声をかけた。フィンは名前だけでなく工事の日と川の水位を記した。板を打ち終えた時、橋はまだ人を渡していなかった。
フィンは板を打ち込む前に、橋の向こうのホルへ長さを読み上げた。雨で木が膨らむため、隙間を小さく残す。二人は同じ場所へ立てなくても、一つの橋を同じ寸法で直せた。休み時間には湯の入った器を縄で送り合い、濡れた手を温めた。古い板の刻印は乾いた紙に写され、工事帳の間へ挟まれた。




