守衛の歌
魔王城の門で、若い守衛が古い労働歌を口ずさんでいた。聞きつけたダルムは立ち番中の私語を注意しようとしたが、近くの職人が同じ節を小さく返すのを見て歩みを止めた。
その歌は重い石を持ち上げるとき息を合わせるためのものだった。橋の作業員にも城の石工にも伝わっている。守衛は門の補修に加わってから覚え、疲れた足を揃えるとき無意識に歌っていた。
ダルムは敵の足音を聞き落とさぬよう、見張り中は歌うなと告げた。しかし交代所でなら構わないと言い添えた。命令を受けた守衛は顔を上げ、礼をした。
夜更け、石工たちは城壁の欠けを一つ直した。仕事が終わると交代所から短い歌声が聞こえた。城を守る者の胸にあるのは、いつも戦いのことばかりではなかった。
交代所には戦死した昔の石工の名が薄く刻まれていた。職人たちはその文字を消さずに壁を塗り直している。若い守衛は名の読み方を知らず、年長の兵から、かつて城壁の崩壊を食い止めた人だと聞いた。
ダルムは歌を禁じようとした自分の判断を思い返した。警戒を緩めれば危険だが、働く者が息を合わせる方法まで取り上げる必要はない。仕事を終えた石工が腰を下ろすと、守衛は温かい湯を一杯差し出した。城の石の間に響く低い節には、敵を威嚇する意味などなかった。
城の若い守衛は夜番の終わりに、石工の名をもう一度確かめた。自分が立つ門がどれほど古いか、普段は考えたこともない。老兵は、石が丈夫でも継ぎ目は傷むのだと教えた。戦の備えで忙しい日ほど、石壁を点検する者の手を忘れてはいけない。守衛は歌の節に合わせ、掃除の箒をゆっくり動かした。




