灯を残す墓地
墓守は死者の数に応じて灯を増やす昔の習わしを断った。油が足りず、灯をすべてともせば診療所から借りることになる。代わりに日が沈む時間だけ共同の灯を掲げることにした。
若者の母は不満を言わなかった。息子の墓にだけ火をつけたい気持ちはあったが、隣の石の下にも帰らぬ人がいる。墓守が細い灯芯を整える手を見つめ、母は自分の持ってきた油を半瓶置いた。
学校の教師サラは子供たちに墓参りを強制しなかった。死を知らない子も、最近家族を失った子もいる。希望した子には花の植え方だけ教え、言葉を求めなかった。
暮れ方、墓地には一つの灯がともった。墓守は風除けの板を立て、火が消えるまで傍に座る。東の森から勇者の新しい目撃談が届いた日だったが、灯を見守る彼には、戻らない名のほうが多かった。
墓守は灯芯を切り揃える前に、風の向きを調べた。灯を増やせば明るくなる一方、火が倒れたとき枯草へ移る危険も増える。墓地の石畳には古い割れ目があり、そこへ油を流さぬよう木皿を置いた。
若者の母は隣の墓に花がないことを知り、持ってきた花束から一輪を分けた。名前は読めなかったが、誰かを待つ場所であることは同じだった。教師サラが来たとき、母は子供に悲しい顔をさせる必要はないと話した。サラはうなずき、花の根を傷めない水のやり方だけを教えた。灯がともる時間、墓地では誰も勇者の名を口にしなかった。
墓守は灯を消すとき、残った油を瓶へ戻さなかった。埃が入った油は別の用途に使う。彼は灯皿を磨いてから棚へ納め、明日の花の水を汲んだ。墓地には新しい土の匂いが残っていた。母の植えた小さな苗だけが、夕風に揺れていた。




