護衛のための椅子
護衛長ダルムは城の石段で年老いた兵が息を切らしているのを見つけた。立ち番の数は足りているが、交代の待ち場所には椅子がない。老兵は昔の傷が雨の日に痛むと言い、壁にもたれていた。
ダルムは背の低い椅子を運ばせた。若い兵が座ってもよいと告げると、隊列が崩れると心配する声が上がった。彼は、疲労で槍を取り落とすほうが隊列を崩すと答えた。
魔王の謁見の間へ至る道には新しい見張りが増えている。王自身は敷居から出られず、護衛はその不可思議な制約も知っていた。門を閉ざすだけでは王を守れないと、ダルムはようやく気づき始めた。
夜の交代時、老兵は椅子に腰を下ろして膝を伸ばした。若い兵が温かい湯を渡す。ダルムは巡回表の端に休息の時刻を増やした。警備の強さを、立ち続けた時間で測らないためだった。
椅子を置く位置は、敵が来たとき走る兵の通り道を塞がない場所に決めた。ダルムは座った者の視界も確かめ、石段の角から門の灯が見えることを確認した。椅子はただの休息具ではなく、見張りの配置を考える手がかりにもなった。
老兵は昔の負傷を若い者へ語りたがらなかった。勇敢な話として聞かれるのが苦手だったからだ。ダルムは無理に尋ねず、歩くときにどちらの膝が先に痛むかだけ確認した。翌日、エナが膝当てを仕立てに来た。老兵は戸惑い、こんなものを頼んだ覚えはないと笑ったが、試すと階段が少し楽になった。
椅子の脚には滑り止めの布が巻かれ、石床を傷つけぬようにした。若い兵が座ると視界が低くなるため、交代所の窓を少し開けて周囲を確かめる。ダルムは試してから配置を認めた。休むことを許された兵は、次の巡回の前に靴紐を結び直した。




