四つの影
東の森へ向かった斥候ネインは、三日ぶりに古い観測棚へ戻った。雨で地面が柔らかくなり、人間の足跡がよく残っている。四人の足は別々の重さで土を踏み、そのうち一人だけは長い距離を走った形跡があった。
棚の近くに倒れていた赤目狼は、村の猟師が既に運んでいた。狼の牙は薬の材料になるし、毛皮は冬の靴に使える。危険な獣の死も、残された者には暮らしの一部だ。
ネインは小さな野営跡を見つけた。灰は冷え、鍋を置いた円い跡が四つの足跡の間にあった。血は落ちていない。食料の包み紙には人間の街の印が押されていた。
「ここで休んだだけか」
同行した猟師ファロが言った。二人は倒木の陰に腰を下ろし、地図を広げた。四人組が向かった先には人の住まない石窟がある。石窟は古い魔獣の寝床だが、近年は地熱が弱く、中に入る者も少ない。
ファロは石窟へ近づくのを嫌がった。彼の父は昔、そこに入ったきり戻らなかった。ネインは無理に誘わなかった。自分が知りたいことと、誰かに危険を負わせることは別だ。
夕刻、二人は高台から石窟の入口を見た。そこに人間の小さな焚火が四つ揺れていた。先頭の男が一度立ち上がり、入口へ向かって腕を伸ばす。何かを確かめているようだった。
ネインは矢をつがえなかった。距離も風向きも悪い。それより、四人がここで何を探しているのかを城へ伝える必要がある。
石窟へ続く斜面には、古い道標がいくつも立っていた。崩れた字を読むと、以前は湯治客が通う道だったらしい。ファロの母も幼い頃に病気を治しに来たと語っていた。今は草が伸び、道標は地面に倒れかけている。ネインは帰りに一つを起こした。敵を探すだけの道でなく、誰かが故郷へ帰る道でもあったからだ。
彼は焚火の位置を図面に記し、まだ明るいうちに引き返した。




