古橋守の指
会合の翌日、元橋守は人間の船頭フィンに伴われて古橋を調べた。男の左手には、石積みの仕事で傷めた指が二本あった。魔族の職人ホルは対岸からその動きを見て、石を置く角度に無理があると気づいた。
フィンが説明を伝えると、男は不機嫌な顔をした。それでも細い棒を石の下に差し、指を守る支えを作った。仕事の腕は失われていなかった。なぜ通行銭を取り立てる道を選んだのかは、まだ本人の話を聞く必要がある。
橋の欠けた部分には苔が生えていた。ホルは人間の腕だけで持てぬ大石を用意したが、自分の領域から向こうへ渡すには綱と滑車が必要だった。二人は川を挟んで綱の長さを確かめる。
夕方、元橋守は徴収した銭を全額返すとは言わなかった。代わりに通行を止めないと口にした。フィンはその言葉を書き留めたが、約束が守られるまでは帳面を閉じなかった。
石を支える棒の先にフィンが布を巻くと、元橋守の傷んだ指でも押しやすくなった。ホルは対岸から声を張り上げ、力を入れすぎると石が崩れると警告した。二人は一度作業を止めて、古い石組みの写真代わりに細い炭で形を写した。
元橋守の仲間には、銭を取る仕事から離れたいと訴える若者がいた。彼は通行人を怖がらせたことを後悔しているが、帰る家を持たない。フィンは橋の仕事が見つかるか確約せず、正規の雇い主と会う場を作ると答えた。働く手を必要とする場所はある。それでも人を傷つけたことが消えるわけではなかった。
フィンは若い元徴収者に道具の手入れを教えたが、作業場の鍵はまだ預けなかった。信頼は一度の言葉では戻らない。若者は不満を口にせず、鋸の歯を一つずつ拭いた。ホルは遠くからその仕事を見守り、終われば刃を油紙に包むよう声をかけた。




