水車の歯
水車番ラウネは回転のたびに鳴る低い音を聞き取った。息子ボルには同じ音にしか聞こえない。ラウネは車輪を止め、濡れた歯車を一つずつ触らせた。奥の木歯が少し欠けていた。
水路職人ギズを呼ぶほどの修理ではないと考えたが、歯車の材を運ぶ道の一部が領域の外にある。人間の荷運びへ頼めば早い。それでも頼む相手の仕事を増やすことになると、ラウネは先に荷を減らした。
ボルは代わりの木歯を削るため、学校の帰りに工房へ寄った。鉋の刃を傾けすぎて一本を失敗する。父は削り直しを命じず、どこを間違えたか木目を見せた。
翌夕、水車は前より小さな音で回った。粉を待っていた村の女が袋を受け取り、今日のパンには間に合うと礼を言う。ボルはその袋の白さを見て、木歯一本の仕事を少し誇らしく思った。
欠けた木歯を外すと、その隣にも細いひびが見つかった。ラウネは一つ直して安心せず、車輪を半回転ずつ動かして全体を確かめた。粉を挽く人々へ遅れを伝えると、一人のパン屋は前日に残った粉を融通すると申し出た。
ボルは学校へ戻ってから、木目に沿って削った方が刃が軽いと友人に話した。友人は橋の板もそうなのかと尋ね、二人は授業のあと木切れを持ち寄ることになった。修理の知恵は家だけに閉じていない。夕方、父が新しい歯車を指ではじくと、いつもより鈍く安定した音が返ってきた。
粉屋の女は水車が静かになったことに気づき、ラウネへ礼を言った。息子が木歯を削ったと聞くと、明日のパンを一つ持ってくると約束した。ボルは照れて顔を背けた。父はその姿を見ながら、修理が終わった木片を捨てず、次の仕事の見本として残した。




