二粒の種
西の村でミナは祖母から二粒の麦の種を預かった。一粒は畑へ、もう一粒は翌年まで残す。畑が雨不足を免れても、収穫が必ず増えるとは限らない。祖母は長く土を見てきた人の手つきで小袋を縛った。
荷運びカルは村へ届いた種麦を分け、受取人の数と畑の広さが一致していないことに気づいた。家族を失って畑だけが残った家もあれば、避難者が増えた家もある。同じ配り方で済ませれば不公平になる。
ミナは畑へ向かう途中、白い丘の境界で遊ぶ子供に会った。あちら側に落とした球を取りに行けず、棒で引き寄せようとしている。ミナは持っていた籠を置き、棒の先に紐を結んで手伝った。
帰宅後、祖母は土の匂いを嗅ぎ、播くのをもう一日待つと決めた。ミナは二粒の片方を掌で温めた。旅の剣士が何度命を取り戻そうとも、この小さな種には一度の春しかなかった。
カルの持つ種麦の袋には村ごとの札が縫い込まれていた。雨で文字が薄れ、隣の村のものと見分けがつかなくなった袋が二つある。ミナは祖母に教わった穂の形を見比べたが、自信はなかった。村長は袋を開けて勝手に分けず、元の届け主へ照会した。
白い丘の向こうでは人間の少年が球を拾い、境界のこちらへ投げ返した。魔族の子は礼を言ったが、丘のてっぺんへ二人で行こうという誘いには答えられなかった。ミナは紐を巻き直し、別の遊びを考えようと提案した。畑に戻ると祖母は種を入れる穴の深さを教え、土がまだ湿りすぎていることを確かめた。
祖母はミナの掌の種を見て、播くときは息を吹きかけないよう教えた。軽い種は風へ飛ばされる。家に戻ると保存用の一粒は乾いた土器へ入れ、棚の高い場所へ置いた。来年使う日が来るか誰にも分からない。それでも残す仕事には意味があった。




