灰色の粉
東の森の外縁で、斥候ネインは木の葉に薄い灰色の粉が付いているのを見つけた。焚火の灰とは違い、濡れた指でこすると粘りがあった。同行した猟師ファロは袋に少し採り、匂いを嗅がないよう注意した。
森の奥には古い石壁がある。だが粉が石壁から来たと決まったわけではない。風下の樹にも同じものが付き、獣の足跡は普段どおり残っていた。ネインは見た位置を木札に刻み、砦へ戻る。
学匠モールは送られた粉を少量の水に溶かし、沈むまでの時間を調べた。弟子ソラは魔法の痕跡を探したが、何も確かなものを得られない。モールは調べた結果より、まだ知らぬことを先に書かせた。
夕方、森の番小屋では鹿肉が煮えていた。ファロは粉の付いた葉を火にくべなかった。別の木箱に入れ、夜番の目に入る場所へ置いた。獲物が減った気配は今のところなかった。
ネインの手袋に付いた粉は、濡れた後に硬く固まった。ファロはそれを剥がす前に布の切れ端へ写し、採取した木の種類を書き添えた。風が森の南から吹いていたことも覚えている。記録は立派な紙ではなく、狩りに使う古い包み紙の裏だった。
番小屋へ戻る途中で二人は仔鹿に出会った。角の小さな鹿は粉のある枝を避け、低い草を食べていた。それが危険を知っている証拠かどうかは分からない。ファロは動物が普通に食べるから安全と決めるのを戒めた。焚火を囲む仲間へ採取地を伝え、今夜の薪を森の別の方角から運ばせた。
粉の採取に使った小刀は水洗いされ、他の狩り道具から離して置かれた。ネインは次の巡回へ持って行かず、新しい刃を借りることにした。まだ危険かどうか分からないものを広げぬためだ。




