川面の選択
舟頭組合からの返書が届いた。通行銭を集める一団の長は、失職した元橋守だという。橋の修理が途絶え、人の往来が減ってから仲間と徴収を始めたらしい。事情は書かれていたが、被害を受けた商人への詫びはなかった。
守備隊長グラドは文を一度閉じ、徴収をやめる交渉を続けることにした。長が気の毒だからといって、荷を奪われた者の損を消すわけにはいかない。人間の組合が立ち会う場を作る案をメルドへ送った。
魚売りリナは返事を聞いて、すぐ解決するとは思わなかった。それでも舟の便が増えた日には市場へ新しい客が来る。小さな子の持つ銅貨を受け取り、釣り銭を確かめた。
川の水位は前日よりわずかに下がっていた。ケルンは船底を叩き、浸水を調べた。争いの相手に届ける文が決まっても、舟が沈めば人は渡れない。岸の仕事が終わったのは月が昇ってからだった。
返書を運んだ若者は、舟頭組合の封印を濡らさぬよう胸元へ入れていた。グラドは最初にその労をねぎらい、交渉が長引くなら宿を用意すると告げた。使いの者の疲れが大きければ、正しい言葉も届きにくくなる。
元橋守の男は、長年修理を任されていた橋が壊れた際、支払いを受けられなかったという。だからといって道を通る者から勝手に銭を取る理由にはならない。グラドは双方の帳面を比べるよう船頭組合へ求めた。市場ではリナがその日も魚を売り、空いた箱に氷の代わりの濡れ布を敷いた。争いが終わる日を待つ間にも商売は続く。
船頭組合は橋を直した年の契約を探しているという。古い帳面は湿気で読みにくく、調査には時間が必要だった。グラドはその間も通行を妨げるなと求め、双方の署名を残した。




