雨戸の隙間
魔王城の温室で、庭師トゥナは夜に閉じた雨戸の隙間から冷気が入ることに気づいた。若い苗は風で茎が折れる。温室には兵の食事に使う香草も育ち、葉を失えば薬味が足りなくなる。
護衛長ダルムは戸の修理のため職人を通した。城への入構検査は厳しくなっているが、手直しに使う小刀まで取り上げては仕事にならない。ダルムは職人の名と道具の数を記し、自分で戸口に立った。
トゥナが苗を数え終えると、王から香草を二束届けてほしいとの伝言があった。ヴァルゼンは遠い畑を見られない。それでも夕食の皿にどんな匂いが乗るかを覚えている。
修理後の戸は音を立てずに閉まった。トゥナは職人へ温室で採れた細い葱を渡した。城の防衛に関する帳面には、冷気が止まったという短い記録だけが残された。
修理に来た職人は、城内の持ち物検査で鉋の刃を一本預けた。ダルムが道具を数えると、職人は小刀だけで事足りると説明した。戸の隙間を埋める木片を合わせる間、庭師トゥナが苗箱を端へ運び、踏まれぬよう縄を張った。互いの仕事の邪魔をしないための短い相談が続く。
ヴァルゼンが届けさせた香草は、兵の夕食にも使われた。厨房の若い者は王の皿だけ別に飾ろうとしたが、トゥナは余っている葉を皆で分ければよいと勧めた。王は結局同じ鍋の匂いを嗅いだ。温室の戸が直った知らせを聞くと、召使に職人の夕食の席を用意するよう頼んだ。
職人は雨戸を閉じてから、内側の留め具をもう一度押した。庭師は苗の葉先に触れ、冷たい風が当たらなくなったのを確かめた。ダルムは預かっていた道具を数え、元どおり返した。




