薬草を運ぶ靴
医官セフィは東へ送る薬草袋を並べ、湿り具合をひと袋ずつ確かめた。雨の続く道を運ぶなら、煎じ薬にする前の葉を守る紙がいる。助手リグは帳面と包みを同時に抱えてよろめいた。
「荷は半分ずつにしなさい」セフィは袋を取り上げた。「急いで全部駄目にするより遅いほうがいい」。廊下で待っていた裁縫師エナは、布の余りで靴底を二重にする案を出す。薬より先に運び手の足が壊れていた。
騎馬の伝令は領域の端までしか走れない。そこから先は別の足へ荷を渡す。リグは渡し札を新しく作り、受け取った者の名だけでなく、薬の温度と袋の乾きまで記す欄を増やした。
夜になり、東の村から高熱を出した子の知らせが届いた。セフィは一度閉じた包みを開いて薬種を入れ替える。剣を持つ旅人の行方はまだ知れない。彼女の診療所にとっては、今夜眠れない子がいることのほうが確かな知らせだった。
エナが差し出した靴底には左右で異なる縫い目があった。片足を引きずる伝令の歩き癖に合わせたもので、同じ長さの布でも摩耗する位置が違う。セフィは材料費を計算し、靴そのものを新調するより少ないことを確かめた。履いた伝令が廊下を往復すると、かかとの音が少し静かになった。
薬袋を運ぶ順番も変更した。緊急性の高い子供向けは一番外側へ、長く保管する乾燥葉は箱の中央へ。リグは混ざらぬよう袋の口の結び方を分けた。前回、川を渡る途中で濡れた薬は捨てるしかなかった。失った葉の名前を覚えているからこそ、今夜の紐の結び目には力が入る。診療所の窓を叩く雨が弱まったころ、最初の荷が出発した。
朝、伝令は靴紐を結び直してから出発した。セフィは窓越しにその足取りを見送った。




