渡された綱
崖の上で助け出された旅人は、足を痛めて歩けなかった。人間の四人組は古道の向こうで布を裂き、即席の固定具を作っている。兵ベドは境界の手前から、近くの宿場の位置を声で伝えた。
槍の女は頷き、荷を背負う男が地図を取り出した。剣の男は右頬をこちらへ向けたが、何も言わなかった。ロアは喉が渇き、何を問いかけてよいか分からない。
荷を背負った年長の男は、怪我人の膝を支えるために自分の杖を折って添え木にした。ロアには思い切ったことに見えたが、男はためらわず布で固定していた。槍の女は人間の宿場へ続く道を尋ね、ベドは遠くの高い杉を指して曲がり角を説明した。地図へ描けない起伏があることも伝えた。
剣の男はその間、旅人の肩へ水筒を掛け直していた。強い相手が何を考えているかは、近くで見ても分からない。その手はひどく落ち着いて見えた。
「城へ行くつもりなのか」
思わず声を上げると、剣の男はしばらくこちらを見た。それから遠い城のある方角へ目を向けた。返事は聞こえず、仲間が旅人を支えて歩き出した。
ベドはロアへ、追うなと命じた。追いたくても境界の向こうへは行けない。だがロアの足が止まったのは境界のせいだけではなかった。さっき救われた旅人の姿が頭から離れなかったのである。
崖の手前には、四人組が使った綱の端が残されていた。旅人を助けるため、こちらから投げた綱を使ったのだ。ベドはそれを巻き取り、濡れた泥を落とした。
砦へ戻ると、隊長レシュは救助の経緯を一つずつ尋ねた。剣の男がしたことと、城へ向かったかもしれないという推測を分けて記録した。ロアの手はまだ震えていたが、字を書くことはできた。
翌朝、綱は干してから倉へ戻された。再び誰かを救うために使われるかもしれない。ロアはその重さを忘れないよう、結び目を手で確かめた。




