崩れた古道
夜の雨で東の古道の一部が崩れた。斥候ネインから知らせを受けた隊長レシュは、村の荷車が通れないか確認させた。崩れた場所は幅こそ狭いが、下には深い沢がある。
兵ベドは迂回路を探し、昔の猟師道を思い出した。しかしその道は境界の外側を通る部分があり、魔族の荷車は進めない。人間には回れる道でも、村の者には戻れない道だった。
ロアは沢へ板を渡す案を出した。大工の経験がある村人に見せると、仮橋なら人は渡れても荷車の重さには耐えられないと言われた。まず崩れた地面に石を積み、土が流れるのを止める必要がある。
村長は収穫物を運べなくなると心配した。レシュは兵を貸し、道が直るまで村の石倉に食料を保存するよう頼んだ。危険な場所へ荷車を無理に通すより、運ぶ日を遅らせる方がよい。
作業中、ロアは沢の向こうで人間の足跡を見つけた。昨日の雨が消してしまった痕もあり、誰のものかは分からない。勇者らしき四人組が通ったのかもしれないが、崖崩れを起こした証拠はなかった。
崩れた道の横には、村の子供が昔使っていた細い抜け道があった。ロアが見つけて喜ぶと、ベドは一度立ち止まらせた。そこは大人一人がやっと通れる幅で、荷車も担架も進めない。避難の道としては使えず、逆に迷い込んだ人が動けなくなるかもしれない。二人は入口へ枝を立て、正式な迂回路ができるまで通らないよう印をつけた。
道を直す職人は崖の土の色を見て、次の雨が降る前に水の逃げ場を掘る必要があると告げた。
夕方、工事場に木の柵が立てられた。ベドは柵へ『この先、崩落』と二つの言葉で書き、魔族にも人間にも分かるようにした。危険な道は誰にとっても危険だった。




