寝台の端
東砦へ運ばれた老人は、夜半に高い熱を出した。医官が城から届くのを待つ間、門番ユリは水で布を冷やし、額へ置いた。家族の者は交代で寝台の横へ座り、薬を飲ませる時間を確かめた。
兵ロアは警備と看病の両方を手伝おうとして、途中で椅子に座ったまま眠ってしまった。年長のベドが肩へ毛布を掛け、次の見張りは自分が代わると告げた。
朝、老人の熱は少し下がった。しかし歩く力は戻らず、家族は村の家へ帰すか砦に残すか迷っていた。隊長レシュはどちらにも危険があると説明し、本人の望みを聞くことにした。
老人は小さな声で、家へ戻りたいと言った。畑に置いた木の椅子が気になるという。息子はその椅子を持ってくればよいと答え、ロアに助けを頼んだ。
午後、ロアは村へ行き、古い椅子を運んだ。脚が一つ短く、座るとわずかに揺れる。老人はそれを見て笑い、家にいるような気持ちになったと話した。
医官から教わった熱の測り方を、ユリは家族へ一つずつ説明した。老人の額へ手を当てるだけでなく、水を飲めた量や汗の出方も確かめる。息子は何度も頷いたが、疲れで聞いたことを忘れそうだった。ユリは木札へ簡単な印をつけ、薬を飲ませた時刻を残した。
老人の椅子には長年座ったためにできたくぼみがあり、家族はそこを優しく撫でた。ユリは水の器を寄せ、息子へ薬の時間を伝えた。夜中に看病する者が疲れ切らぬよう、家族が交代で横になれる寝床も整えた。老人は皆の声を聞き、安心したように目を閉じた。
外では斥候ネインが四人組の行方を探している。砦の中では椅子の脚へ薄い板を挟む作業が続いていた。戦の足音を待つ場所にも、体を休めるための小さな工夫が必要だった。




