影の通行人
東の砦の門から遠く、人間の影が一つ見えた。四人組の誰かかと思い、ロアは望遠鏡を手に取った。影は古い道をゆっくり歩き、手に大きな袋を持っている。近づくと、足を引きずる年配の男だと分かった。
隊長レシュは見張りを二人残し、ベドとロアに道を調べさせた。男は境界の向こうから、砦の水場を教えてほしいと叫んだ。彼らは近づけないため、手の届く範囲に水桶を置いて指で示した。
男は袋から割れた木椀を出して水を汲み、何度も礼を言った。旅の途中で靴底が剥がれ、もう長く歩けないという。ベドは境界の手前から、近くの人間の宿場へ行く道を教えた。
午後、村の子が男へ古い靴を一足持って来た。大きさは合わなかったが、紐を結び直せば歩けそうだった。男は靴を履いて立ち上がり、深く頭を下げた。
ロアは男の背を見送りながら、なぜ勇者だけは何度も城へ来るのだろうと考えた。道に迷う人も、足を痛める人もいる。同じ人間でも、皆が同じ強さで歩いているわけではない。
男が履き替えた靴は踵が少し高く、最初の数歩はぎこちなかった。村の子は土へしゃがみ込み、結び紐を短くする方法を教えた。男は老眼で紐がよく見えず、礼を言って結び直してもらった。ベドは道を示すだけでは歩けない者もいると悟り、次の荷から杖に巻く布も数枚用意するよう提案した。
男は荷袋から乾いた梨を一つ出し、子供へ渡した。子供は受け取る前に母親を見た。母親が頷くと、二人で半分に分けて食べた。
砦へ戻ると、レシュは水場の印を大きくするよう命じた。敵を探している場所にも、ただ水を求める者は現れる。白石の横に置かれた新しい木札には、町の言葉と人間の言葉が並んだ。




