薄い盾
魔王城の護衛長ダルムは、鍛冶師ゼマから新しい盾の試作品を受け取った。厚い鉄板ではなく、木と薄い金属を重ねた軽い盾だった。槍を受ければ割れるかもしれないが、狭い階段では持ち替えが速い。
兵たちは重い盾の方が安心できると言った。ダルムは訓練場で、重い盾を持った兵と軽い盾を持った兵を走らせた。階段を上り下りするだけで息の乱れ方が違い、誰もが驚いた。
しかし木の盾は火に弱い。三度目の勇者が使った光の術に対して、どこまで耐えられるか分からなかった。ダルムは軽い盾を全兵に渡さず、廊下の警備と門の警備で使い分けることにした。
訓練の途中、若い兵が木の盾の縁で指を切った。ゼマは仕上げが足りないと謝り、すぐ端を削り直した。戦う道具も、使う人の手に傷を負わせては困る。
夕刻、魔王ヴァルゼンは盾の報告を聞いた。自分が三度勇者を倒したことを誇るより、次に城へ来る誰かを止められるかを考えていた。ダルムは『止められる』と断言せず、守れる距離が少し増えたとだけ説明した。
ゼマの工房へ戻された試作品には、盾の裏に貼った布が汗を吸って剥がれかけた跡があった。ニコは接着を強くすればよいと考えたが、ゼマは洗えなくなると指摘した。兵が毎日身につける道具なら、手入れできる構造が必要だ。二人は紐で外せる裏当てを作り、乾きやすい場所へ掛けた。
試作の盾を借りた兵は、握りが細すぎると正直に話した。ゼマは寸法を直すため手形を取らせ、左利きの兵にも試してもらうことにした。
その夜、訓練場には割れた盾の欠片が残された。明朝の兵が、どの角度で壊れたか確かめるためである。新しい工夫は、壊れたものからも学ばなければならなかった。




