水を分けた場所
東の砦へ来た商隊の証言には、剣の男の仲間が旅人へ水を分けた話があった。隊長レシュはその場所を地図で探した。古い石切場のそばには枯れ井戸があり、夏の終わりから水が少ないと聞いている。
斥候ネインは猟師ファロと同行し、石切場の手前まで足を運んだ。境界に遮られた先には、人間の焚き火の跡が見える。灰は雨に濡れ、新しいのか古いのか分からなかった。
二人が見ていると、一人の人間の旅人が枯れ井戸へ近づいた。桶を下ろしても水は届かず、旅人は困ったようにあたりを見回している。ネインは持っていた水筒を、境界の手前から道へ置いた。旅人は近づいて受け取り、深く礼をした。
ファロは警戒していた。見知らぬ人間が敵ではないと証明できるわけではない。しかし水筒を渡したネインも、そのことは理解している。
旅人は空の水筒を返し、石切場の先に小さな泉があると教えた。ただし魔族はそこへ行けない。ネインは位置を図面へ書き、今度通る人間に確認してもらえるよう、言葉を残した。
旅人は水を飲み終えてから、ネインの短い角をまじまじと見た。魔族に水をもらうとは思わなかったと正直に言い、すぐに失礼だったと謝った。ネインは怒らず、自分たちも遠い土地の人間について知らないことが多いと答えた。ファロは、水筒の蓋が緩んでいるのに気づき、締め直してやった。
石切場の向こうでは風に砂が舞い、古い道が半分埋まりかけていた。旅人はその道を避けるよう教えてくれたが、ネインたちは境界を越えて確かめられない。聞いた言葉を確かな事実へ変えるのは、別の者の仕事になる。
砦へ戻った彼は、水を分けた相手が四人組かどうかは分からないと報告した。その後に『誰かが水を求め、誰かが水を渡した』とだけ付け加えた。理由を決めるより、起きたことを残したかった。




