白い丘の客
西の白い丘へ、一人の人間の旅人が現れた。少女ミナは畑からその姿を見つけ、荷運びのカルへ知らせた。旅人は境界を知らないらしく、丘を真っすぐ下ってくる。カルは近づくことができず、手を振って止まるよう合図した。
旅人は中年の女で、行方不明の兄を探していた。人間なら丘を越えられるが、魔族の村人は向こうへ出られない。女は村に似顔絵を見せ、道を通ったことがないか尋ねた。
村長は知らないと答えたが、女を追い返さなかった。水を出し、旅人がたどった道を聞いた。似顔絵の男は髭が濃く、肩に古い傷があるという。勇者の特徴とは違った。
ミナは女へ、自分も丘の向こうを見てみたいと話した。女は驚き、ここに住んでいるのに一度も行ったことがないのかと問うた。ミナは頷き、行こうとすると脚が止まるのだと説明した。
女は試しにカルへ手を差し伸べた。しかし丘のある場所でカルの手は届かなくなり、女が一歩戻ると触れられた。女の顔から笑みが消え、境界の意味をようやく理解した。
女が地図を眺めていると、ミナの祖母は丘の向こうの天気を尋ねた。女はそちらでは朝に霜が降り、低い谷にはまだ緑が残っていると話した。村の者は季節が違うようだと驚いたが、山の陰が多ければ霜の降り方も違うと祖母は説明した。遠い土地のことを聞く機会は少ない。女は兄を探す手がかりを得られなかったが、茶の椀を両手で包んで話し続けた。
女は一晩村に泊まり、翌朝また兄を探して丘の向こうへ向かった。ミナは自分で描いた粗い地図を渡した。行けない場所まで詳しく描いたわけではないが、井戸と安全な道は示してあった。旅人は礼を言い、地図を胸にしまった。




