↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイヴン ― 境界線上の者たち ―  作者: 徴《しるし》
異変の始まり(本編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/28

悪い兆し

「夜久(やく)さん。さっさと準備してください」


「待ってくれ遠矢。今、依形の事前チェックが終わるから」


 今回は俺とセレスタではなく、別の組み合わせで巡回任務に出ることになった。

 宵宮先輩が、体調不良で欠勤だったからだ。


 恐らく、体調不良の原因は二日酔いに違いない。

 あの人は討魔士としては凄腕だが、人としては少し問題がある。

 セレスタもそうだが、討魔士は不真面目な方が強くなれる法則でもあるのだろうか。



「ここも異常無し。次行きます」


「少し休憩しないか。この時期でも、水分の補給は大切だと思う」


「必要ありません。澱みの発生があるかもしれませんから」


「いや、だからこそ体調を万全にしとくいう意味で……」


「普段から管理しておけば、常に万全なはずです」


 これは、別に彼女が俺のことを嫌っているからではない。

 彼女は同僚なら、誰に対してもこういう態度なのだ。

 自分も真面目な方だという自覚はあるが、彼女は堅物過ぎる。


 そんな会話を交えながら規定ルートを進んでいると、携帯計測器が異常を検出した。

 時間をあまり置かずに、スマホから緊急警報が鳴り響く。


「何?まただと?どうなっているんだ」


「今は確率論なんてどうでもいいです。ここは視界が悪いから、上から人魔を探します。オーマ」


 依形の覚醒と共に、耳先まで伸びている彼女の髪が、熱風で激しく揺れ始めた。

 彼女の向こう側のビルが、ぐにゃりと熱で歪んで見える。

 皮膚が赤く煌めく竜の鱗へと少しずつ移ろい、角と尻尾が内側から食い破るように出てきた。


 少し離れていても分かる熱い鼓動は、オーマの出力の強さを肌で感じさせる。


 変化を終えて、ビル群の上空に跳んで行った彼女を見上げる。

 オーマは体内で生じる余剰エネルギーを鱗の隙間から噴出し、移動や攻撃、防御に転換できる。


 本当なら、俺が父親から譲り受けるはずだったもの。

 だから、メカニズムはきちんと理解している。

 足りなかったのは、俺の実力と努力だった。



「発見しました。ここから約1キロメートル先の、小さな公園です。位置データを送信します」


「分かった。一度戻ってきてくれ」


「いえ、このまま私が先行します」


「待て!民間人の避難が済んでる以上、焦る必要はない!」


「量産型なんて、足手まといです」


 彼女は俺の制止も聞かずに、一人で行ってしまった。


 俺は違和感を覚えた。普段の彼女なら、二人一組で動く討魔士の原則を、自ら破るような真似はしない。


「まさか……」


 依形のデメリットの一つ、精神汚染がすぐに思い浮かんだ俺は、ビルの隙間を急いで駆け抜ける。

 腕にある量産型の依形が、いつもより重く感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
宵宮先輩の不真面目さへの愚痴から始まる少し落ち着いた空気から一転、警報音と共に一気に張り詰める緊張感が凄いです! 景色や、角と尻尾、噴き出すエネルギーなど、遠矢が纏うオーマの異形感に大興奮です。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。