丙型人魔 第五対策班
「ただいま戻りました。リーダー、今回は普通の甲型でした」
「いつも通り、犠牲者は出してないよ。今回は物も壊してないし」
「二人ともお疲れ様。依形の使用時間、出力、位置情報のログをいつも通りデータ化してね。もちろんメンテナンスも」
僕たちは現場の後処理と、設置型計測器の調査を終えて、第五対策班のオフィスに戻った。
リーダーへの挨拶も早々に、今から成果物を作らないといけない。
自分のデスクに戻って依形をPCと接続し、先程の戦闘ログを抽出。
そこから、用意してあるフォーマットに沿って必要な項目を埋めて行く。
最初はテンプレートとにらめっこしながらやっていたこの業務も、今ではすっかり慣れたものだ。
「異常チェックシートの記入まで終わったらこっちに渡せ。交換して、もう一度だ」
「はーい……はぁ、人魔と戦うよりもこっちの方が憂鬱」
「検品報告書を作るよりはずっと楽だろうが。我慢しろ」
二人で作業を続けていると、ハルカ達も巡回任務から帰って来た。
僕らとは反対の、女性同士のコンビだ。
アカネは朝一番にはいなかったから、現地集合だったのだろう。
体も態度もとにかくでかい、第五対策班の問題児である。
「いやー、今日もすっげぇきつかったぞ。マジ重労働だったわ」
「先輩、虚偽の報告は止めてください。リーダー、今回も問題なく業務を終えました。各地の計測器をチェックしましたが、異常は検出されていません」
「二人もお疲れ様。いつも通り、成果物を作成してね」
問題がなかったら、何も提出しなくてよくないかな。
僕は常日頃からそう思っているけど、どうやら許されないらしい。
アカネが、僕たちの作業を見てそっとデスクに近寄って来た。
黙っていれば、黒髪ロングで身長が高いだけの美人なのに。
「あれ?もしかして今日は依形使った感じ?」
「そうですね宵宮先輩。短時間の稼働でしたが、それでも俺からしたら結構な負担なので」
「相変わらず軟弱ですね。そんな弱い量産型の負担なんて、大したことない癖に」
「コウヤは指揮官タイプだから問題ないよ。ハルカと違って無神経じゃないし」
ハルカの鋭い瞳が僕を射抜く。
しまった。つい口が滑った。でも、後悔も反省もしない。
コウヤがいつも頑張っているのは、近くにいる僕が一番知っているから。
その後は会話も途絶え、各々の作業に集中した。
やがて、17時を知らせるゆったりとした音楽が、オフィス内のスピーカーから流れる。
「よし、帰るぞお前ら!リーダー、お先~」
「お先に失礼します。明日は時間ギリギリにならないよう、気を付けます」
「また明日ねリーダー。今日はちゃんと報告書出したから」
「リーダーも早めに上がってください。では、失礼します」
自分以外の全員がタイムカードを押して退出した。
私は戸締り確認と個人の忘れ物チェックをし、最後にオフィス全体に異常がないかを見てから、自分もデスクを離れた。
一日中、休憩時間以外はずっと座っていたため腰が痛い。ほとんど動いていないはずなのに、ハーフアップのサイド部分は形が崩れて、三つ編みも解けそうだった。
「ふぅ……私も、たまには現役に戻りたくなるな」
かつて自分の腕にあったはずの依形の影を見て、少しだけ寂しそうに呟いた。




