新入りの先輩
あのおじさんがうちの第五対策班に来た次の週、おじさんの助手を名乗る人が加入した。
リーダーが言っていた、本部からの追加人員だろう。
討魔士の制服に、新型の依形を装着してる。
僕の髪よりずっと短いけど、色はほぼ一緒。更に、瞳も同じ色だ。
あれ、ちょっと似過ぎじゃないかな。身長は負けてるけど。
年齢は、ちょっとよく分からない。
「初めまして。僕は主任補佐の石踊ユウマです。ミコトさんがご迷惑をおかけして、本当にすみません。いつもこう、思い立ったらすぐ行動してしまうタイプでして……」
一人称まで同じだ。第五対策班内だけで、キャラ被りが発生してしまった。
でも、苦労人って感じの人だから中身はコウヤに近いかも。
僕が感じた疑問を解決するかのように、おじさんが補足を入れてくれた。
「彼は、被験体002……ああごめん。セレスタくんの遺伝子を元にした、特殊な依形を使った影響でこうなってね」
「あー、それで僕に見た目が似てるのか。なるほどね……って、あの、それって色々と大丈夫?」
「おじさんが主任になった時に、計画ごと破棄したからね。今は違う依形だから、安心してほしい」
そういうことを言っているわけではない。研究者って、みんなこんな感じなのかな。
普通、自分の見た目が急に様変わりしたら、もっと悲観的になるはず。
決して、望んでこうなったわけでないだろうに。
対策班の新入りのもとに、メンバーが続々と集まってくる。
「よろしくユウマ!おー、なんかデカくなったセレスタって感じだな」
「先輩、無神経過ぎますよ。よろしくお願いします、石踊さん」
「こんな感じで賑やかなところだけど、これからよろしくね、石踊くん」
「はい!ミコトさん共々、これからよろしくお願いします!」
僕は気が付いてしまった。
この前の新人は一時的な加入だったしあんまり関わることもなかったけど、やっと僕にも後輩ができたのだ。
コウヤとハルカは同期だし、僕は年齢もこの中では一番下だった。
やっと、やっと先輩風を吹かせる。
「あ、言い忘れてたけど、彼、アカネと同い年で討専出身よ」
リーダーの無慈悲な言葉で、僕の先輩としての威厳は始まる前から無くなった。
7年選手に偉そうな顔なんて、できるわけがない。
リーダーが、人の増えたオフィス内をぐるりと見回して、一人足りないことに気付いた。
僕がいるから、当然いるものだと思っていたらしい。
「そういえば、夜久くんは?今日は一緒に出勤してないのね」
「あっ、そうだった!なんか、調子が悪いから朝一番で病院に行くって言ってた。メール来てない?」
「いえ、来てないわね。いつもこういう連絡はちゃんとしてくれるのに……」
「まあ、コウヤは毎日お家のことを頑張ってるし、疲れが溜まってるんじゃないかな」
言い訳をさせてほしい。
僕も、コウヤと一緒に暮らし始めた時は家事をやろうとしていた。
でも、研究所で育った僕は生活力が壊滅的で、何をやっても仕事を増やす結果にしかならなかった。
そのため、現在は禁止令が出ているのだ。決して、コウヤに押し付けているわけではない。
僕の言葉に納得したのか、リーダーは自分のデスクに戻って行った。
コウヤの病院が終われば、新メンバー二人を入れて新しい班編成を決める会議が始まる。
多分、連携を考えて今まで通りの編成だとは思うけど。
あの研究者コンビも、付き合いが長いみたいだし。
コウヤ、早く来てくれないかな。




