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レイヴン ― 境界線上の者たち ―  作者: 徴《しるし》
東の兎

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整理と発見

 しかし、コウヤはいつまで経っても病院から戻らなかった。

 月曜日の朝から混雑しているとは考えにくい。

 もしかして、体に何か異常があったのではないか。


「そろそろ会議を始めましょうか。大丈夫、先週は何も問題なかったんだから」


 リーダーが優しく、慰めの言葉をかけてくれる。

 そう、少し心配し過ぎだよね。

 ビックバン戦から1週間以上経ってるし。

 きっと、ただの偶然だ。


 みんなでデスクを動かして会議の準備を整えると、リーダーが会議を始めた。


「さて……班編成は全員揃ってからしたいし、情報を今一度整理しましょうか。まず、今回私たちの都市で起きた、丙型人魔の誕生ね。丙型は自身のことを、超新星ビックバン様と名乗ったのよね、セレスタ?」


「うん。自分は甲型とは違う特別な存在だ、って感じの言い方をしてた」


「ありがとう。冠城さん、研究所の見解を改めて教えてください」


「えぇ?また言わなきゃいけないのぉ?ちょ、ユウマくん分かったから睨まないでよ。……ゴホンッ、えー、過去の記録を参照した結果、あの個体は未成熟だと思われます。つまり、まだ進化の途中ってわけだねぇ」


 リーダーが僕たちに確認を取りながら、資料の順番通りに進行していく。


「これは、東部地方で発生したもう一体の丙型、三日月兎も同様ね。そして、本部の精鋭班が、犠牲を出しながらも生きたまま捕縛した。しかし、もう一体の丙型、おそらくビックバンと思われる個体に輸送車を襲撃され、三日月兎を奪取された」


 兎は満月のイメージがあるのに三日月なのは、成長途中という自覚があるのだろうか。

 というか、ビックバンと違ってかなりまともな名前である。

 どっちも自称なのに、知性、いや品性に差を感じる。


「この件以降、ビックバンと三日月兎は行方知れず。全国各地で捜索が開始して、1週間以上経過するも、手掛かりは一つもなし。ここまでが現在分かっている情報ね」


「はーい、質問質問」


 アカネが珍しく、ちゃんと手をあげて順序を守っている。

 新型依形が第五対策班に来てから、アカネは少し真面目になった。

 そんなに、リーダーが現場復帰を決めたのが嬉しいのかな。


「どうぞ」


「捜索って、討魔局が全力をあげて徹底的にやってるんだろ。なんでこの期間で、足取りの一つぐらい掴めていないんだ?」


 リーダーの代わりに、おじさんが椅子から立ち上がって力説し始めた。


「いい質問だね!そう、普通ならもうとっくに見つかってもおかしくない。討魔局の澱みと人魔を観測する技術は、素晴らしいからね。でも、どれだけ観測範囲を広げても何も網に引っ掛からない。これは仮説の段階だけど、丙型は人間に擬態する能力を持っている可能性が高い」


「冠城さん、勝手に発言しないでくださいね……実際、討魔局も同じような考えみたいです。人間社会に紛れているのではないか、と」


 人間に擬態する人魔。

 ビックバンは人間のことをかなり見下していた。

 そんな存在に成り代わってまで、隠れる理由は何だろう。


「もしかしたら、蝶と同じ理由なのかな」


 僕が思わず声に出してしまった考えに、全員の視線が向いた。

 全員、少し怖い目をしている。

 僕の発言は、そんなにおかしいことだったろうか。


「あ、いや。蛹から羽化したばかりの蝶って、体が柔らかいでしょ?体が落ち着くまで、待ってるのかなって」



 言ってから僕も気づいてしまった。

 この考えが合っていれば、あの時戦った丙型は、一番弱い状態だったのだ。


 そして、逃げ隠れしている事実を考えると、この考えは妄想だけで片付けられなかった。



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