新装備
室内に、おじさん一人の乾いた拍手が響き渡った。
おじさんの方を見ると、満面の笑みを浮かべて頷いていた。
一人で勝手に納得して、一人で喜んで、ちょっと気持ち悪い。
僕の感動を邪魔しないでほしい。
「いい仲間に恵まれたねぇ。おじさんちょっと泣いちゃった。これなら、運用上のリスクも問題なさそうだ」
「冠城さん!そんな言い方しないでください。彼は、兵器じゃないんですよ」
「おっとごめんごめん。つい、いつもの癖で」
おじさんの軽口をリーダーがたしなめたけど、反省している様子はなかった。
それより、こっちから聞かなくちゃいけないことがある。
僕のこれからと、おじさんの目的だ。
「運用上のリスクって……僕はこれからもみんなと戦っていいってこと?そもそも、おじさん何をしにこんな地方都市に来たの?」
「むしろ、この第五対策班にいた方が、君は最高のパフォーマンスを発揮できる。そして、おじさんの仕事は依形のメンテナンス係さ」
「メンテナンスは僕たちもやってるけど……おじさんって、そんなにすごい人なの?」
「夜久コウヤが昔から持っていたアンプルあるでしょ。君の発作を抑える薬。あれの開発者、おじさんだよ。夜久家からは多額の出資があったからねぇ」
つまり、このおじさんは本当に僕の味方だった。
コウヤがどうやってあんなものを手に入れたのか、ずっと気になってはいた。
僕の古巣から入手していたのだ。
もしかして、僕を研究所から連れ出した後、コウヤは裏では繋がっていたのか。
「あ、勘違いしないでほしいんだけど、君の生体データの提供とかは、一切受けてないよ。前任者は解雇されたし。まあ、今時あんな非人道的行為は許されないさ」
僕の不安を感じ取ったのか、まだ何も言ってないのにおじさんはやんわりと否定した。
「それにね、この新装備は専門家がいないと運用が難しいんだ」
おじさんはそう言うと、先ほどリーダーのデスクに置いた紙袋をその場で開け始めた。
自然と、全員がリーダーのデスクに集まる。
さっきは東部地方のお土産で、食べ物って言ってたはず。この人、平然と噓をつく悪い大人だ。
違った。ひよこみたいなお饅頭と一緒に、見たこともない形状の依形がいくつか出てきた。
食べ物と一緒にするとか、控えめに言っても頭がおかしい。
「おいおいこれってまさか……」
「さ、最新鋭の依形ですか!?本部の精鋭班だけが使えるって噂の!」
アカネとハルカが、新装備の依形を見てテンションを上げる。
「そう!長時間の運用を想定した、自信作だよ。出力は以前と変わらないけど、討魔士への負担をかなり軽減できる作りになっている。予算の関係で、極一部でしか採用できていないけど」
おじさんは鼻高々で、嬉しそうに解説している。
そんなにすごいものなら、なおさら食べ物と同じ袋に入れていた意味が分からない。
おじさんは依形を一つ取ると、リーダーに手渡した。
「だから、これなら君にも使えるよ。元最強の討魔士さん」
「……!で、ですが私はもう現場を離れて長いですし、今さら出ても足を引っ張るだけで」
「もちろん、リハビリと調整は必要だから今すぐってわけにはいかない。でも、もう一度戦える可能性があるなら、やるだろう?」
リーダーが復帰するか否か迷っていると、アカネがものすごい勢いで大声を出した。
「やれよ明野!!もう一度、お前と一緒に戦えるならアタシは……!」
「アカネ、急に大声出さないで。それは、友達としてのお願い?……ふぅ、そうね。みんなに追いつくのは大変だろうけど、頑張ってみようかしら」
丙型人魔が誕生して、不安なことだらけの僕らの世界。
でも、第五対策班は確実に前を向いて、進んでいた。




