↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/10

100%の向こう側

音が消えた。


風も。


悲鳴も。


瓦礫が崩れる音さえ聞こえない。


レオンは少女をゆっくり地面へ降ろした。


「……あれ?」


体が軽い。


今までとは比べものにならないほど。


指を握る。


空気が震えた。


「これは……。」


周囲の景色が止まって見える。


いや、違う。


自分だけが速すぎる。


「まさか……。」


ヴァルグの額から冷や汗が流れる。


禁書に記されていた一文が脳裏をよぎる。


『100%へ到達したドパガキは、人を超え、理性を捨てる。』


だが、目の前のレオンは違った。


笑っていない。


怒ってもいない。


無表情だった。


感情が、消えていた。


「レオン!」


ガロスが叫ぶ。


返事はない。


レオンはただヴァルグを見つめる。


「来るぞ!」


ヴァルグが剣を構えた瞬間。


レオンの姿が消えた。


「なっ──!」


次の瞬間。


ドゴォォォン!!


衝撃波だけが広場を駆け抜ける。


ヴァルグの体が何百メートルも吹き飛び、城門を突き破った。


兵士たちは何が起きたのか理解できない。


「見えなかった……。」


「一撃……?」


ヴァルグは瓦礫の中から立ち上がる。


鎧が割れていた。


四天王の鎧。


神鉄で作られ、竜の炎にも耐える鎧。


それが拳一発で砕けた。


「あり得ん……。」


レオンは静かに歩いてくる。


足音すら聞こえない。


ヴァルグは本能で理解した。


勝てない。


歴代の英雄とも違う。


勇者とも違う。


目の前にいるのは、


災害だった。


「くっ!」


ヴァルグは魔力を解放する。


黒い炎が空を覆う。


「《終焉黒炎》!」


王都を飲み込むほどの黒炎がレオンへ襲いかかる。


誰もが絶望した。


しかし。


レオンは炎へ歩いていく。


避けない。


防がない。


ただ歩く。


黒炎はレオンへ触れた瞬間──


消えた。


「……は?」


ヴァルグの顔から血の気が引く。


レオンは首をかしげる。


「熱くない。」


その一言だけだった。


次の瞬間。


また姿が消える。


「しまっ──」


ドン。


軽く額を指で弾かれた。


それだけ。


それだけなのに。


ヴァルグの体は一直線に空へ飛び、雲を突き抜けて見えなくなった。


数秒後。


遥か彼方の山脈から爆音が響く。


ズゴォォォォン!!


静寂。


誰一人として言葉を発せない。


ガロスだけが小さく呟いた。


「……勝った。」


しかし。


レオンは勝利を喜ばなかった。


空を見上げたまま立ち尽くしている。


瞳から光が消えていた。


「レオン……?」


セリア王女が恐る恐る近づく。


レオンは振り向く。


「……君。」


「誰?」


その一言に、広場が凍りついた。


「え……?」


「何を言ってるの?」


レオンは周囲を見渡す。


兵士。


冒険者。


王都。


どれも初めて見るような目だった。


「ここは……どこ?」


ガロスは禁書の最後の一文を思い出す。


『100%の力は肉体を完成させる。だが代償として、その者は最も大切な記憶を失う。』


ガロスは拳を強く握った。


「これが……ドパガキの呪いか。」


レオンは四天王を倒した。


王都を救った。


だがその代償は、あまりにも大きかった。


彼は、自分が「レオン」であることさえ、忘れ始めていた――。

第一章 完

読んで頂きありがとうございます。

深夜テンションで書き始めましたので気が向いたら更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。