ドパガキ認定
「……勝った。」
誰かが小さくつぶやいた。
次の瞬間。
広場が大騒ぎになる。
「嘘だろ!」
「B級冒険者でも歯が立たなかった魔獣を……」
「ガキが殴って吹き飛ばしたぞ!」
レオンは拳をぶんぶん振っていた。
「いてて……。」
魔獣は倒せた。
だが拳もかなり痛い。
「やっぱ硬ぇな。」
そこへギルドの職員たちが駆け寄る。
「君! 名前は!」
「レオン。」
「ランクは!」
「登録してねぇ。」
「は?」
職員は固まった。
登録していない少年が、B級指定魔獣を倒した。
前代未聞だった。
その時。
ドンッ!
倒れていた魔獣が起き上がる。
「まだ生きてる!」
レオンは振り返る。
「お、第二ラウンド?」
心臓がまた速くなる。
鼓動が耳に響く。
「いいねぇ。」
脳内に数字が浮かぶ。
《ドーパミン分泌 74%》
「まだ上がるのか。」
魔獣が突進する。
レオンも走る。
正面から。
誰もが叫ぶ。
「避けろ!」
しかし。
レオンは避けない。
「正面勝負だ!」
拳と角がぶつかる。
轟音。
地面が割れる。
魔獣はその場で止まり、ゆっくりと崩れ落ちた。
完全に沈黙した。
「終わった……。」
広場に拍手が広がる。
子供たちが一斉に駆け寄る。
「兄ちゃんすげぇ!」
「もう一回殴って!」
「どうやったの!」
レオンは照れくさそうに頭をかいた。
「いや、楽しかっただけ。」
その言葉を聞いた冒険者たちは顔を見合わせる。
「楽しかった……?」
「命懸けだったんだぞ。」
一人の老人がゆっくり歩いてきた。
長い白髪。
黒いローブ。
王国最高の学者、エドガーだった。
彼はレオンをじっと見つめる。
「少年。」
「なんだ?」
「今、興奮していたな。」
「そりゃそうだろ。」
「命懸けだったし。」
老人は目を細めた。
「……間違いない。」
「何が?」
老人は震える声で言った。
「ドパガキだ。」
周囲がざわつく。
「ドパガキ?」
「なんだそれ。」
若い冒険者は首をかしげる。
老人だけは青ざめていた。
「五十年前に読んだ禁書に記されていた。」
『ドーパミンを力へ変える者。』
『興奮するほど強くなる者。』
『その成長速度は常識を超える。』
『しかし百パーセントを超えた時──』
そこまで言って老人は口を閉ざした。
「続きを言えよ。」
レオンが催促する。
老人は首を振る。
「……知らない方がいい。」
「えー。」
「気になるじゃん。」
その時だった。
王都全体に鐘が鳴り響く。
ゴォォォォン!
ゴォォォォン!
異常事態を知らせる鐘。
兵士が血相を変えて走ってくる。
「緊急事態です!」
「王都北門が突破されました!」
「魔王軍です!」
広場が凍りつく。
魔王軍。
それは十年以上姿を見せていなかった人類最大の敵。
「敵の数は!?」
「約三百!」
「幹部が一人確認されています!」
B級冒険者たちの顔色が変わる。
「幹部だと……。」
「あれはA級でも勝てるか分からない。」
誰も動けない。
だが、一人だけ違った。
レオンは口元をニヤリと歪める。
「三百人?」
「めちゃくちゃ面白そうじゃん。」
その一言で、脳内の数値が跳ね上がる。
《ドーパミン分泌 81%》
新スキル解放条件まで、あと19%。
レオンは知らなかった。
彼の「楽しそう」という感情こそが、最も危険な引き金であることを。
そして北門では、魔王軍幹部が遠くからレオンの姿を見つめ、不敵に笑っていた。
「ようやく見つけた。」
「四人目のドパガキを。」
読んで頂きありがとうございます。
深夜テンションで書き始めましたので気が向いたら更新します。




