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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
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第九話「豪快な男」

 夕暮れ時。


 騎士団支部の食堂には、皿のぶつかる音だけが響いていた。


「平和だなぁ……」


 椅子にもたれながら呟く。


 最近は聞き込みも一段落した。

 魔物退治の依頼はちょくちょくありはしたが、

 暇と言えば暇だ。


「そういうこというのだめだよ〜」


 向かいでスープを飲んでいたエキナが言う。


「?」


「そういうこと言うと大体何か起きるの」


「なんだそれ」


「経験則!」


 偉そうに胸を張る。

 意味がわからない。

 その時だった。


 バァン!!


 食堂の扉が勢いよく開いた。


「がははははは!!帰ったぞぉ!!」


 でかい。

 とにかく声がでかい。

 思わず肩が跳ねた。


「うわっ」


 俺だけじゃない。

 窓際にいた鳥まで飛び立っていった。


「ゴルド!」


 エキナが立ち上がる。


 扉の向こうから入ってきたのは大柄な男だった。

 身長はかなり高い。

 肩幅も広い。

 日に焼けた肌。

 無精髭。

 背中には巨大な剣。


 そして何より。


 笑い声含めて声がうるさい。


「おー!エキナ!」


「おかえり!」


「元気してたか!」


「してたよ!」


「飯は食ってるか!」


「食べてる!」


「よし!」


 がはははは!!


 豪快に笑う。


 なんだこの人。

 エキナも慣れた様子だ。


「ゴルドも元気そうだね」


「俺が元気じゃなかったことあるか?」


「ないかも」


「だろう!」


 本当にうるさい。

 するとゴルドの視線がこちらへ向いた。


「お?」


 数歩近付いてくる。


「お前がソラか!」


「そ、そうだけど...」


 次の瞬間。


 バシィ!!


 肩を叩かれた。


「ぐっ!?」


 普通に痛い。


「おっと!」


 ゴルドが笑う。


「すまんすまん!ついな!」


「ついで済ませる威力じゃないだろ……」


 肩を押さえる。


 エキナが呆れた顔をした。


「加減してよ」


「がはは!悪ぃ!」


 全然悪いと思ってなさそうだった。


「まぁ座れ座れ!」


 言いながら自分が先に座る。


 自由な人だ。


「聞いてるぞ!」


「何を?」


「記憶喪失!」


 言い切られた。


「直球だな」


「がははは!」


 笑って誤魔化された。


「だ、誰なんだ...」


「あぁそっかそっか。ソラは会ったことないもんね。この人はゴルド!」


 思い出したように紹介をする。


「ゴルドだ!エキナの親みたいなもんだな!ちょっとした調査で森の方に行ってたところだ!」


 鼻の下を擦る。


「同じ騎士...なのか?」


「うん、私が騎士になるよりもずっと前から騎士をやってるんだよ」


「ベテランだな!ガハハハ!」


 仲が良さそうだ。

 エキナも元気な方だがゴルドがいることでさらに空間が元気になっている感じがする。



 しばらくして。

 三人で食事を始める。


 ゴルドは信じられない量を食べていた。


「それで?」


 エキナがパンを齧る。


「調査どうだったの?」


 その言葉にゴルドが頷く。


「あー、その話か」


 豪快に肉を飲み込む。


「魔物は増えてるな!」


「やっぱり?」


「おう!」


 即答だった。


「近隣の森を見て回ったが去年より多い!」


「へぇ」


「まぁここまではいい!」


 ゴルドは指を立てる。


「毎年多少は増える!」


「そうなんだ」


「問題はその先だ!」


 エキナが首を傾げた。


「先?」


 ゴルドは少しだけ表情を変えた。

 さっきまでの笑顔が消える。


「ゴブリンが消えてる」


 食堂が静かになる。


「消えてる?増えてるのに?」


 俺が聞く。


「あぁ」


 ゴルドは頷いた。


「巣が空だ」


「討伐されたとかじゃなくて?」


 エキナ。


「違う」


 即答。


「戦闘した形跡がねぇ」


「逃げた?」


「なら逃げるときの足跡が残る」


 ゴルドは腕を組む。


「外に出て行った足跡はあるがな」


 低い声だった。


「ゴブリンだけが綺麗に消えてる」


 何十匹もいた巣が。

 丸ごと。

 その言葉は妙に気味が悪かった。


「他の魔物は?」


「増えてる」


「じゃあ余計変じゃん」


 エキナも眉をひそめる。


 ゴルドは鼻を鳴らした。


「だろ?」


 再び食堂が静かになる。

 俺はあのゴブリンたちを思い出していた。


 弱かった。

 だが集団だった。

 そんな連中が巣ごと消える。


 それも跡形もなく。


「なんかいるのかな」


 思わず呟く。


 ゴルドは少しだけ笑った。


「いるだろうな」


 その笑顔はさっきまでと違った。


 ベテランの騎士の顔だった。


「長年やってりゃわかる」


 窓の外を見る。

 夕日が沈みかけていた。


「こういう時は大体ろくなことが起きねぇ」


 エキナが苦笑する。


「またそういうこと言う」


「経験談だ」


「怖いんだけど」


「がははは!」


 また豪快に笑う。


 だが。

 その笑い声を聞きながらも。


 俺の胸の奥には、妙な引っ掛かりが残っていた。


 ゴブリンが消えた森。


 増え続ける魔物。


 そしてゴルドの嫌な予感。


 それが何を意味するのか。

 今はまだ、誰にもわからなかった。


 いや、この時は言わなかったが俺には少し気がかりなことがあった。

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