表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
8/32

第八話「スキル」

 森に静寂が戻る。


 エキナは剣を軽く払って鞘へ納めた。


「よし、終わり!」


 まるで畑仕事でも終えたかのような声だった。


「終わりって……」


 俺は思わず苦笑する。

 さっきまで魔物と戦っていたとは思えない。


 その時だった。


「ん?」


 地面に倒れていたゴブリンの体が、少しずつ崩れ始める。


 黒とも灰ともつかない粒子になって空中へ溶けていく。


「また消えるのか」


 あの時戦ったアーマードボアもそうだった。


 やはり見間違いではなかったらしい。


 数秒も経たないうちに、ゴブリンたちの姿は完全に消えた。


 残されたのは地面の傷跡と――


「……あれ?」


 棍棒。


 短剣。


 それに投石用の革袋。


 武器だけがその場に残っている。


「なんで武器は残るんだ?」


 俺がそう尋ねると、エキナは当たり前のように答えた。


「それは普通の物だからだよ」


「普通の物?」


「うん」


 エキナは短剣を拾い上げる。


「魔物の体は魔素でできてるの」


「魔素……」


 どこかで聞いた単語だ。


 図書館の本にも載っていた気がする。


「だから倒されると元の魔素に戻っちゃう。でもこういう武器は違うよ?」


 短剣をくるりと回す。


「ゴブリンが拾った物だったり、人から奪った物だったりするからね」


「なるほど」


 だから残るのか。


「たまーに素材とかも残るよ」


「素材?」


「角とか牙とか魔石とか!」


「へぇ……」


 そんなことを話しながら森を歩く。


 畑へ戻る途中だった。


 するとふと、一つ気になることを思い出す。


「そういえばさ」


「んー?」


「戦ってる時に言ってた三速ってなんなんだ?」


 その瞬間。


 エキナが「あー」と声を漏らした。


「三速ね」


「なんか急に速くなったやつ」


「あれはスキルだよ」


「スキル?」


 聞き慣れない単語だった。

 エキナは少し考えるように空を見上げる。


「説明難しいなぁ」


「そんな難しいのか?」


「ううん。感覚的な話だから」


 そう言って指を一本立てた。


「スキルっていうのは、人それぞれが持ってる特別な力のこと」


「特別な力」


「うん」


 歩きながら続ける。


「魔法とは別物ね」


「別なのか」


「別!」


 力強く頷く。


「魔法は勉強したり練習したりして使うものだけど、スキルは最初から持ってるものだから」


「全員持ってるのか?」


「んー、持ってない人もたまーにいるけど大体持ってるよ」


「ただ、何のスキルか分からない人もいるし、一生気付かない人もいるけど」


「そんなことあるのか」


「あるある」


 なんだか不思議な話だった。


 俺にもあるのだろうか。


 そんな考えが頭をよぎる。


「で、エキナのは?」


「私の?」


「三速」


 するとエキナは少しだけ照れ臭そうに笑った。


「私のスキルは〈アクセル〉」


「アクセル」


 どこか名前通りな気がする。


「簡単に言うと速くなるスキル!」


 やっぱりそのままだった。


「一速は普通」


「うん」


「二速で走るよりちょっと速いくらい」


「なるほど」


「三速で結構速い」


 それは見た。


「四速は?」


 俺が聞くと、


「使えないよ?」


 と返された。


「使えないのか」


「まだねー」


 エキナは笑う。


「スキルも鍛えないと強くならないから」


「へぇ」


 意外だった。

 生まれつき持っているものなら、最初から完成しているのかと思っていた。


「私も最初は二速までしか使えなかったし」


「じゃあ三速も努力で?」


「努力!」


 胸を張る。


 その言葉は妙に納得できた。

 確かに、あの動きは才能だけで手に入るものには見えない。


 しばらく沈黙が続く。


 森を抜け、畑が見え始める。


 その時。


 俺は小さく呟いた。


「じゃあ俺にもあるのかな」


 エキナは少しだけこちらを見る。


「あると思うよ」


「思う?」


「うん」


「なんで?」


「勘!」


「何かわかるかは別だけどね」


 エキナは笑った。


「記憶戻ったら分かるかも?」


「どうだろう」


 苦笑する。


 記憶。

 その言葉はまだ少し重い。

 自分が誰だったのか。

 何をしていたのか。

 何も分からない。


 だが――


 ふと、あの時の出来事が脳裏をよぎる。


 アーマードボア。


 突進。


 そして見えた光景。


 まるで未来を先に見たような、あの感覚。


(あれは…俺のスキル...なのか?…)


 思わず考える。

 だが口には出さなかった。


 偶然かもしれない。

 勘違いかもしれない。


 まだ何も分からないのだから。


「ソラー?」


 エキナの声で我に返る。


「聞いてる?」


「聞いてる聞いてる」


「絶対聞いてなかった!」


「聞いてたって」


「じゃあ今何の話してた?」


「……」


「ほら!」


 嬉しそうに笑うエキナ。


 ため息をつきながら歩き出した。


 分からないことはまだ山ほどある。

 けれど。


 少なくとも今日、また一つだけこの世界のことを知ることができた。


 .....多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ