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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
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第七話「騎士なれば」

「一緒に行くって、畑に?」


 畑へ向かう途中、エキナが振り返る。


「あぁ」


 俺は頷いた。


「魔物ってやつをちゃんと見ておきたい。それに……」


 少し言葉を探す。


「世話になってるしな。何かできることがあるなら手伝いたい」


 エキナは少しだけ目を丸くした。


 それから困ったように笑う。


「気持ちは嬉しいけどねぇ」


 顎に指を当てて考える。


「勝手なことしない?」


「しない」


「危ないと思ったら逃げる?」


「逃げる」


「本当に?」


「多分」


「そこは絶対って言ってよ!」


 呆れたように笑う。


 だが少し考えたあと、


「まぁいいや。見学だけね」


 そう言って前を向き、畑に向かって走り出した。


 ⸻


 荒らされた畑は街の西側にあった。

 踏み荒らされた作物。

 折れた柵。


 地面にはいくつもの足跡。


 エキナがしゃがみ込む。


「んー……」


 指で土をなぞる。


「これだね」


 人間のものではない。


 小さい。


 だが数は多い。


「わかるのか?」


「なんとなく」


 立ち上がる。


「たぶんまだ近くにいるよ」


 そう言って森へ足を踏み入れた。


 ⸻


 森の中を進む。


 足跡は続いている。


 数分ほど歩いた頃だった。


 ガサッ。


 茂みが揺れる。


 俺は反射的に身構えた。


 そこから現れたのは――


 小柄な人型。


 緑色の肌。


 異様に長い腕。


 手には棍棒。


「……あれが」


「ゴブリン」


 エキナが小さく答える。


 さらに左右の茂みから二体。


 合計三体。


 一体は棍棒。


 一体は錆びた短剣。


 もう一体は石を握っている。


「ギギッ!」


 見つかった瞬間、向こうもこちらを認識した。


 空気が変わる。


「下がっててね」


 エキナが剣を抜いた。


 ⸻


 最初に動いたのは棍棒を持ったゴブリンだった。


 地面を蹴る。


 思ったより速い。

 小柄な体で一気に距離を詰めてくる。


「ギャアッ!」


 棍棒が振り下ろされる。


 だが、

 当たらない。


 エキナは半歩だけ横へ動いた。


 たったそれだけ。


 棍棒は空を切る。


「よっと」


 軽い声。


 そのまま剣が走る。


 首元を斬られたゴブリンが地面を転がった。


 ⸻


 だが終わらない。


 短剣を持った個体が飛び出す。

 横から。

 かなり嫌らしいタイミングだ。


「ギッ!」


 短剣が閃く。


 エキナは剣で受け流す。


 金属音。


 さらに二撃、三撃。


 思った以上に手数が多い。


 俺が思っていたより遥かに厄介だ。


 ⸻


 その時だった。


 後ろにいた一体が腕を振る。


 投石。


「エキナ!」


 思わず叫ぶ。

 石は一直線。

 顔面を狙って飛んでいた。


 だが

 エキナは振り返らない。

 避けようとも見えない。


 石が頬へ届く、その寸前。


 ほんの僅か。


 首を傾けた。


 ブォンッ!


 石が顔の横を通過する。


 赤いポニーテールがふわりと揺れた。

 陽光を受けた髪が一瞬だけ宙に広がる。


 それだけだった。


 まるで最初から見えていたみたいに。


「え……」


 思わず声が漏れる。


 エキナは何事もなかったように前を向いている。




「三速」


 ぽつりと呟いた。

 次の瞬間。


 姿がぶれた。

 地面が弾ける。


 一気に石投げのゴブリンとの距離が消える。


「ギッ!?」


 慌てて後退する。


 だが遅い。


 エキナの剣が先に届いた。


 ゴブリンの頭が宙を舞う。


 ⸻


 残る一体。


 短剣持ち。

 それでも逃げない。


 叫びながら飛び込んでくる。


「ギャアアア!」


 必死だった。


 恐怖もあるのだろう。


 それでも仲間のためか、最後まで向かってくる。


 だがエキナは全てを捌く。


 受ける。


 流す。


 避ける。


 無駄がない。


 まるで訓練を見ているみたいだった。


 俺が死にかけた戦いとは何もかも違う。


 最後。


 ゴブリンが大振りした。


 その瞬間。


 エキナの剣が下から跳ね上がる。


 短剣が空へ舞った。


 武器を失ったゴブリンが後ずさる。


「ギ……」


 震えている。


 エキナは一歩前へ出た。


「ごめんね」


 静かな声。


 剣が振られる。




 森に静寂が戻る。


 エキナは剣を払い、鞘へ納めた。


「よし、終わり!」


 さっきまで戦っていたとは思えない声。


 俺はしばらく何も言えなかった。


 魔物に対する恐怖よりも、

 戦いの技術に対する関心よりも、

 華麗に舞う姿に感銘を受けていた。


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― 新着の感想 ―
こんばんは。Xの企画からやってきました! ひとまず読んだ感想としてはテイルズシリーズのような雰囲気が感じられました。 文章は良いのですが、段落下げがあるとさらに読みやすくなると思います。 ☆とブクマ付…
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