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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
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第四話「聞き危機込み込み」

 数日が経った。


 脇腹の痛みはほとんど引き、腕の傷もかさぶたになっている。


「……思ったより治るの早いな」


 自分の体を軽く捻ってみる。


 多少の違和感はあるが、動けないほどじゃない。


「無理はしないでよ?」


 背後から声。


 振り向くと、エキナが腕を組んでこちらを見ていた。


「いや、もう大丈夫そうだぞこれ」


「“そう”って言ってる時点でダメだよ」


 ぴしっと言われる。


「……はい」


 苦笑しながら肩をすくめる。


 この数日、エキナは騎士の仕事の合間を縫って、何度も様子を見に来てくれていた。

 あぁ、騎士と言うのは街を守るために戦う人たちのことでエキナはこの街の騎士の1人なんだとか。


 薬を持ってきたり、水を替えてくれたり。

 ついでに街のことも少しずつ教えてくれた。


「そういえば」


 ふと思い出す。


「俺のこと、聞き込みしてくれてたんだろ?」


「あー、うん」


 エキナは少しだけ申し訳なさそうに笑う。


「でもごめんね、全然手がかりなくて」


「いや、それは別に……」


 当然と言えば当然だ。


 記憶もない、身元も不明。

 そんなやつを知ってる人間の方が少ない。


「まぁ、だからさ」


 エキナがぽんと手を叩く。


「今日は外、出てみよっか」


「外?」


「うん。自分で見た方が早いでしょ?」


 にこっと笑う。


「それに、聞き込みも一緒にやればいいし」


「……なるほどな」


 確かに、その方が早い。


「じゃあ決まり!」


 エキナはくるっと背を向ける。


「行こ、ソラ」


「おう」


 軽く返して、後を追う。


 ⸻


 外に出た瞬間、空気が変わる。


 人の声。

 足音。

 何かを焼く匂い。


「……すげぇな」


 思わず漏れる。


 通りには人が溢れていた。


 人間らしい人間がほとんどだが、ごく稀に少し見た目の違う人もいる。


「……あれも、普通なのか?」


 小さく聞く。


「あー、獣人とかだね」


 エキナがあっさり答える。


「田舎だからあんまりいないけどね。首都の方に行ったらもっといるよ」


「……へぇ」


 自然と視線がそっちに向く。


 不思議と“怖い”とは思わない。


 ただ、見慣れないだけだ。


「キョロキョロしすぎ」


 くすっと笑われる。


「いや、そりゃするだろ……」


 苦笑する。


 しばらく歩く。


 露店が並び、果物やら何やらが売られている。


 値札に目がいく。


「……ちょっと高くないか?」


「ここだと普通〜」


 即答。


「マジか……」


 感覚はあるのに、基準がわからない。


 妙な違和感。


「ま、そのうち慣れるって」


 エキナは気楽に言う。


 ⸻


「おばさーん!こんにちわー」


「あら、エキナちゃん。こんにちわ〜」


 パン屋に来た。焼きたての匂いが充満していて匂いだけでもお腹が空く。


「今日のパンは〜...じゃなかった!聞き込みをしに来たんだ〜」


「今パン買おうとしなかったか?」


「気のせい気のせい!それにさっきも言ったでしょ?聞き込みするなら人がたくさん行き交う場所!」


 人差し指を立てる。


「つまり街1番のパン屋さん!」


 と言ってるが時間的にお腹が空いたと言うのが大きいだろう。


「ま、まぁ...俺はわからないから文句言えないけど」


「仲が、いいのか悪いのかわからないねぇ。」


 パン屋のおばさんがケタケタと笑う。

 並べられたパンと同じようにふくよかな体型の優しそうな人だ。


「へへへ〜、あそうそう。この子知らない?記憶無いんだって」


「おやそうなのかい?んー....」


「どんなに些細なことでも良いんです。なにか無いですか?」


 頭を下げるソラと、頭を掻くおばさん。


「ごめんねぇ、特に記憶には無いよ。首都にいる旦那なら何か知ってるかもしれないけど...」


「そうですか...ありがとうござます。」


「あ!おばさん!このあんぱんちょうだい!」


「結局パン買ってんじゃねぇか」


 そうして一個にとどまらずいくつもパンを買い、パン屋を後にした。



 その後も数件、聞き込みをする。


「こういう人、見ませんでしたか?」

「役目不明の人とか知りませんか?」


 だが、返ってくるのは同じ答え。


「いやぁ、見たことないねぇ」

「知らないなぁ」


 収穫はない。


「……まぁ、そんなもんだよね」


 エキナが苦笑する。


「だなぁ...」


 元よりあまり期待していなかったが、やはり凹む。


 通りの端で、少し休む。


「……そういえば」


 エキナがちらっとこちらを見る。


「どうやってアーマードボアを倒したの?」


 アーマードボアはあの猪のような魔物のこと。


「こう、剣で...突進してくるところに合わせてって感じ」


「でもその剣は?」


「運んでくれてはなかったの?あ、いや責めてるわけじゃなくて」


「うーん、倒れてた時周りには落ちてなかったし...」


「まじか....森に落としたのかなぁ」


「じゃあそれも探さなきゃね〜」


 楽観的だ。


 ⸻


 少し歩いて、広場に出る。


 ベンチに腰を下ろす。


「……疲れた?」


「いや、そうでもない」


 空を見上げる。


 見慣れないはずなのに、妙に落ち着く。


「どう?街」


 エキナが隣で聞いてくる。


「……なんか」


 言葉を探す。


「わけわかんねぇけど、面白いな」


 正直な感想。


「でしょ?」


 嬉しそうに笑う。


「まぁ、わからないことだらけだけどな」


 苦笑する。


「それでいいんだよ」


 エキナはあっさり言う。


「最初から全部わかる人なんていないし」


「……まぁ、それもそうか」


 少しだけ肩の力が抜ける。


 この街。

 騎士。

 魔物。


 断片的だけど、なんとなく繋がってきている。


「……」


 空を見上げる。


「……知らないことばっかだな」


 ぽつりと呟く。


「うん」


 エキナが頷く。


「でも」


 少しだけ笑って、


「君、一人じゃないからね」


「……」


 その言葉に、少しだけ間が空く。


「……あぁ」


 短く返す。


 風が吹く。


 人の声が遠くで響く。


「……悪くないな」


 小さく呟く。


 何もわからないままだけど。


 それでも、ここにいるのは悪くないと思えた。

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― 新着の感想 ―
1話から中々抽象的、テーマがまだふわっとしながら進んでいくので、静かな立ち上がりな印象!まず書き慣れる事!
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