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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
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第三話「ソラ」

 重い。


 体が、やけに重い。


 まるで全身に砂でも詰め込まれたみたいに、

 動かそうとするたび鈍い痛みが返ってくる。


「……ん……」


 喉が渇いている。


 ゆっくりと目を開ける。


 視界に入ったのは、木でできた天井だった。

 見覚えはない。


「……あれ……ここ……」


 ぼやけた頭で呟いた瞬間――


 思い出す。


 森の中。

 あの巨大な生き物。

 突進。

 剣。

 衝撃。


「っ……!」


 反射的に体を起こそうとして、


「いっ……!」


 脇腹に鋭い痛みが走る。


 思わず息を止めた。


「無理しないで」


 すぐ近くから声がした。


 びくっとして視線を向ける。


 そこには、少女が一人。

 椅子に座ってこちらを見ていた。


「……え、誰……」


 思わず口に出る。


 少女は少しだけ驚いた顔をしたあと、

 ほっとしたように笑った。


「気がついた?」


 やわらかい声。


「森の外れで倒れてたんだよ、君」


「……あー……」


 記憶が繋がる。


 歩いた。

 ただひたすら歩いた。

 それで――限界が来て倒れた。


「……マジか……」


 小さく息を吐く。


「……えっと、その……助けてくれたってこと?」


「うん」


 少女は軽く頷く。


「結構ひどい状態だったから、ちょっと焦ったけどね」


「……そりゃそうだよな……」


 苦笑が漏れる。


「……どれくらい寝てた?」


「半日以上かな。もう夕方だよ」


「え、そんなに?」


 思わず目を見開く。


「……うわ……」


 天井を見上げる。


「……普通に死んでてもおかしくなかったな、俺……」


「でもちゃんと生きてるよ」


 くすっと笑う。


「……だな……」


 少しだけ力が抜ける。


 短い沈黙。


「……あのさ」


「うん?」


「ここ……どこ?」


 少女はきょとんとした。


「えっと、この街だけど……」


 言いかけて、ぴたりと止まる。


「……あれ?」


 じっとこちらを見る。


「……もしかして、わからないの?」


「……」


 少しだけ視線を逸らす。


 どう説明するのが正しいのか、自分でもわからない。


「……森で目が覚めてからのことは覚えてる」


 ゆっくりと口を開く。


「歩いたり……あの変なやつと戦ったりとか」


 苦い顔になる。


「でも、それより前が……何もない」


「……」


 少女は黙って聞いている。


「自分が誰かもわかんないし……」


 言葉が少しだけ途切れる。


「ここがどこかも、知らない」


「……そっか」


 否定はしない。


 ただ、静かに受け止める。


「でもちゃんと話せてるし、動けてるし」


 少しだけ明るく言う。


「全部なくなってるわけじゃなさそうだね」


「……まぁ、それは……そうかも」


 少しだけ肩の力が抜ける。


「水、飲める?」


「あ、頼む」


 差し出されたコップを受け取る。


 手が少し震える。


「はい」


 そっと支えられる。


「……ありがと」


 水を流し込む。


 冷たさが喉を通って、体に広がる。


「……生き返る……」


 思わず漏れる。


「大げさだなぁ」


 少女が笑う。


「いやマジで……」


 苦笑する。


 少しの間。


「……そういえば」


 少女が首を傾げる。


「森で倒れてたってことは、魔物にやられたの?」


「……魔物?」


 聞き返す。


「なんか、緑の小さい人みたいなのとか鎧つけた猪みたいなのとか」


「あー……あれか」


 思い出すだけで痛みが蘇る気がする。


「……あれ、魔物って言うのか」


「うん、普通の生き物じゃないやつ」


「……」


 少し考える。


「……一応、倒した……と思う」


「え?」


「あまり、覚えてないけど...煙みたいになって消えた、と思う。」


 自分でも曖昧だ。


「……多分」


「……すごくない?」


 素直に驚かれる。


「いや、死にかけたけどな……」


 苦笑する。


「それでもすごいよ」


 真っ直ぐに言われる。


「普通は無理だから」


「……そうなのか……」


 自覚はない。


「まぁでも今はそれより休むこと!」


 ぱん、と手を叩く。


「また倒れたら意味ないでしょ?」


「……それはそうだな」


 少し笑う。


「あ、そうだ」


 少女が何か思い出したように言う。


「名前、わかんないんだよね」


「……あぁ」


「じゃあさ」


 少しだけ考えて、


「ソラ、とかどう?」


「……ソラ?」


「うん。なんとなくだけど」


 にこっと笑う。


「呼びやすいし」


「……」


 少しだけ考える。


 不思議と、違和感はない。


「……いいかも」


 小さく頷く。


「ほんと?」


「うん」


「じゃあ決まりだね」


 嬉しそうに笑う。


「私はエキナ。よろしくね、ソラ」


「……あぁ、よろしく」


 自然に言葉が出た。


 エキナは立ち上がり、


「何かあったら呼んでね」


 扉の方へ向かう。


「――ちゃんと休むんだよ」


 そう言って部屋を出ていった。


 静かな部屋に、一人。


「……ソラ、か」


 小さく呟く。


 ついさっきまで、自分には名前がなかった。


 いや――今だって、自分が何者なのかはわからない。


 ここがどこなのか。

 なぜ森にいたのか。

 どうしてあんなものと戦えたのか。


 わからないことだらけだ。


 それでも。


「……まぁ」


 天井を見上げる。


「生きてるしな……」


 少しだけ、笑う。


 与えられた名前を胸の中で繰り返す。


 ソラ。


 悪くない。


 ゆっくりと目を閉じる。


 今度は、さっきまでとは違う穏やかな眠りに落ちていく。


 ――こうして。


 記憶のない青年、ソラこと俺の新しい日々が始まった。かな?

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― 新着の感想 ―
めっちゃ面白い! 最後の文章だけ 俺のの になってたのでもし時間あったら直した方がいいかもです!
ソラの名を得た青年とエキナが出会い、物語が始まる——ことすら予定調和だとしたら。そんなことを想像してしまう物語の始まりで面白いですね! 続きも楽しませてもらいますね♪
Xから来ました。ソラ君、良い名前ですね!そして何よりも見ず知らずのソラ君を助けてくれたエキナちゃんはめっちゃええ子やね〜
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