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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部 第二章「都市と騎士」
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第三十八話「最強」

「いてて……。」


 訓練場の隅にあるベンチに腰掛け、ソラは肩を押さえた。身体中が痛い。特に腕は重く、少し動かすだけでも鈍い痛みが走る。


「大丈夫?」


 隣に座るエキナが心配そうに顔を覗き込む。


「うん。たぶん……。」


「たぶんって。」


 その反対側では、リアが腕を組みながら呆れたようにソラを見ていた。


「無茶しすぎだろ。あんなになるまでやるか普通。」


「でも、ザミって強いんだな。」


 ソラがそう呟くと、リアは当然だと言わんばかりに鼻を鳴らした。


「そりゃ強いに決まってんだろ。あいつ、第一部隊でも武器のスペシャリストなんだから。」


「武器のスペシャリスト……。」


「そう。剣だろうが槍だろうが弓だろうが、武器なら大体使える。あいつが本気でやったら、さっきの比じゃないぞ。」


「……あれで?」


「そうだよ。」


 リアは即答した。


「むしろ、あれでもまだ手加減してたんじゃねぇか?」


「……。」


 ソラは黙り込む。


 思い返してみれば、ザミの動きには無駄がなかった。こちらがどう動いても、それを先回りするように木剣が飛んできた。最後の一撃だけは、なぜか身体が勝手に動いたが、それ以外はほとんど何もできなかった。


「じゃあ……。」


 ソラは二人を見る。


「ザミより、他の第一部隊の人たちも強いのか?」


「そりゃあ強いよ。」


 エキナが答える。


「第一部隊は王国騎士団の中でも特別だからね。」


「じゃあ、例えば……団長も?」


「団長?」


 リアが一瞬きょとんとする。


「そりゃそうだろ。」


「団長は――。」


 そこでリアが少しだけ間を置いた。


「最強だよ。」


「……最強?」


 聞き慣れない言葉ではなかった。


 だが、その言い方が妙に引っかかった。


「強いって意味?」


「そういう意味でもあるけど、ちょっと違う。」


 エキナが説明する。


「『最』の一文字に、その人を表す言葉を合わせた称号なんだよ。」


「称号?」


「うん。国王から与えられる特別な称号。」


 リアが指を一本立てる。


「例えば団長なら『最強』。国で最も強いと認められた者に与えられる称号ってわけ。」


「……国で一番?」


「少なくとも、そう呼ばれるだけの実力があるってことだな。」


 リアはそう言って笑う。


「他にもあるぞ。『最智』とか『最優』とか、『最恐』とか。」


「最智……最優……最恐。」


 ソラは一つずつ口にする。


「それぞれ、その人を表してるんだよ。」


 エキナが続ける。


「一番優れた知恵を持つ人なら最智。一番優れていると認められた人なら最優。そして――。」


「最も恐ろしい奴なら、最恐。」


 リアが言葉を引き継いだ。


「……怖いな。」


「まあ、文字通りだよ。」


 リアは肩をすくめる。


「ただ、別に最強が一番上ってわけじゃない。『最』っていうのは、それぞれの分野で頂点って意味だからな。」


「なるほど……。」


 ソラは少し考える。


「じゃあ、団長は本当に……。」


「最強。」


 エキナが笑った。


「それがニアン団長の称号だよ。」


 ソラの脳裏に、昼寝をしていた男の姿が浮かぶ。


 気だるそうに椅子へ座り、面倒くさそうにロマリーの話を聞いていた男。


 あの人が。


「……全然そう見えない。」


 思わず本音が漏れた。


「だろ?」


 リアが笑う。


「初めて見た奴はみんなそう言うんだよ。」


 エキナも苦笑する。


「でも、本当に強いよ。」


「ザミが強いって感じたなら、団長はそれとは別の次元だと思う。」


「……。」


 ソラは遠くにある訓練場を眺めた。


 自分が今まで出会った中で、一番強いと思ったのはザミだった。


 そのザミよりも、さらに上。


 しかも、それを国王から認められている。


「最強……。」


 その言葉を、ソラはもう一度呟いた。


 まだ記憶のない自分には、この国のことも、騎士団のことも、知らないことばかりだ。


 けれど。


 少しずつ、この世界のことが分かってきている。


 そしていつか。


 自分が何者なのかも、分かるのだろうか。


「ソラ?」


「……いや。」


 エキナの声に、ソラは小さく笑った。


「なんでもない。」

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