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創世輪廻譚  作者: からあげ大佐
第一部「もう一度君に会うために」     第一章「始まりの街」
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第二十六話「りんごみたいに真っ赤」

「ソラー!」


 広場の向こうから聞こえた声。


 直後、赤いポニーテールを揺らしながらエキナが駆け寄ってくる。


 相変わらず元気だな。


 そんな感想が真っ先に浮かんだ。


「もう出歩いて大丈夫なの!?」


「会って早々それか。」


「だって一ヶ月寝てた人だよ!?」


 エキナはじっとソラの顔を覗き込む。


 心配そうな顔。


 その様子にソラは苦笑した。


「まぁ、ロマリーから許可は貰ったし。」


「本当に?」


「本当に。」


「無理してない?」


「してない。」


「隠してない?」


「隠してない。」


「本当に?」


「本当だって。」


 ようやく納得したのかエキナは頷いた。


「ならよし!」


 単純だった。


 ソラは肩の力を抜く。


 そのまま二人で街を歩き始めた。


 穏やかな昼下がり。


 商人の呼び込み。


 子供たちの笑い声。


 平和な光景だった。


「そういえばさ。」


 エキナが口を開く。


「一ヶ月も寝てたのに本当に覚えてないの?」


「覚えてない。」


「全然?」


「全然。」


 ソラは肩を竦める。


「目を閉じて、気付いたら一ヶ月後。」


「意味がわからない。」


「それは私も分からないよ。」


 エキナは苦笑する。


「でも本当に心配したんだからね。」


「毎日見に行ってたし。」


「毎日?」


「毎日!」


「暇なのか?」


「失礼だね!?」


 即座に肩を叩かれた。


 全然痛くない。


 だが勢いだけはある。


「普通心配するでしょ!」


「まぁ、それは……ありがとう。」


 ソラが素直に礼を言う。


 するとエキナが一瞬固まった。


「え。」


「ん?」


「今ありがとうって言った?」


「言ったけど。」


「珍しい。」


「なんでだよ。」


 エキナは少し笑った。


「いや、なんか。」


「ちゃんと感謝されると嬉しいなって。」


 そう言いながら少しだけ顔を逸らす。


 照れているらしい。


 分かりやすかった。


 しばらく歩く。


 そしてソラはふと思い出した。


「そういや。」


「キングどうやって倒したんだ?」


「あー。」


 エキナが頷く。


「気になるよね。」


「最後の記憶無いし。」


「ソラが気絶した後ね。」


 エキナは指を折りながら話し始める。


「まず私が斬った。」


「うん。」


「ゴルドが殴った。」


「うん。」


「また私が斬った。」


「うん。」


「ゴルドさんが殴った。」


「うん。」


「また――」


「分かった。」


 ソラは途中で止めた。


「脳筋だった。」


「........」


むすっとする


「でも実際そうだろ。」


「そうだけど!」


 怒り気味に認めた。


 ソラは笑う。


「本部の人たちも来てくれたよ。」


「ロマリーさんとか?」


「うん。」


「もう終わる寸前だったけど。」


 なるほど。


 だからロマリーは謝っていたのか。


 そんなことを考えていると。


 エキナが急に嬉しそうな顔をした。


「でもさ!」


「ん?」


「ソラすごかったんだからね!」


「俺?」


「そう!」


 力強く頷く。


「だってキング相手だよ!?」


「普通なら一瞬で終わるような相手なのに!」


興奮気味に体を乗り出す。


「傷付けたじゃん!」


「まぁ……。」


 思い返してみれば確かにそうだ。


 あの時は必死だったから実感がない。


「ちょっと訓練しただけなのにさ!」


「私びっくりしたもん!」


「キングと会った時に!」


「え、腕がない!ソラ?!って!」


 エキナが身振り手振りを交えて再現する。


 なんだか少し恥ずかしくなった。


「運が良かっただけだろ。」


「違うよ。」


 エキナは即答した。


「運だけであんなことできない。」


「ちゃんとソラが頑張ったから。」


 真っ直ぐな言葉だった。


 だからこそ少し照れる。


 話題を変えるようにソラは視線を逸らした。


「そういえば。」


「ん?」


「一つ聞きたいことがある。」


 エキナが首を傾げる。


 ソラは少し考えてから口を開いた。


「俺さ。」


「死ぬ未来が見えたんだ。」


 エキナが足を止める。


「え?」


「キングと戦ってる時。」


「何回も。」


 ソラは当時を思い出す。


 頭が潰れる未来。


 体を貫かれる未来。


 噛み砕かれる未来。


 全部見た。


「それで避けてた。」


「だから戦えた。」


 エキナは黙って聞いている。


「なんて言うか。」


「死ぬ瞬間だけ見えるんだ。」


「未来が。」


 少しの沈黙。


 やがてエキナは言った。


「スキルじゃない?」


「やっぱり?」


「うん。」


 あっさりだった。


 エキナは笑う。


「スキルなんて人によって全然違うし。」


「未来が見えるスキルがあってもおかしくない!」


 確かに。


 人によってスキルはまるで違う。


「それに。」


 エキナは少し前を向いた。


「助かったんでしょ?」


「まぁ。」


「じゃあ今はそれでいいじゃん。」


 あっけらかんと言う。


 ソラは思わず笑った。


「適当だな。」


「細かいこと気にしすぎなんだよ。」


「そういうもんか?」


「そういうもん!」


 エキナは胸を張る。


 自信満々だった。


 根拠は無さそうだけど。


 でも。


 少しだけ気が楽になる。


 ロマリーと話した時とは違う。


 エキナと話すと、難しく考えていたことがどうでもよくなる時があった。


「そういえばさ。」


 エキナが急に笑った。


「ん?」


「私が助けに来た時どう思った?」


「助かった。」


 即答だった。


 エキナが固まる。


「え。」


「助かった。」


「いや二回言わなくていいよ!?」


 顔が少し赤い。


 何故だろう。


 よく分からない。


「そうか。」


「うん。」


 エキナは少し俯く。


 そして小さく笑った。


「なら頑張って走った甲斐あったな。」


 その笑顔はどこか嬉しそうだった。

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